青キップ導入で「悠然と逆走するママチャリ」をなくせるか…危険自転車撲滅のために警察がやるべきこと
青キップ導入で「悠然と逆走するママチャリ」をなくせるか…危険自転車撲滅のために警察がやるべきこと
■日本の自転車の無法ぶりはヒドすぎる
自転車にクルマと同じ青切符(=行政処分)を導入することの是非については以前からずーっと議論されていた。
私としては大賛成。
正直申しあげて、もう違法自転車の傍若無人ぶりにはうんざりなのである。
私は約半世紀ものあいだ、ずーっと「自転車派」であリ続けた。もちろん今でも自転車派だ。自転車のことも、道交法のこともまったく理解していないような連中(弁護士にもいたりする)が「車道から自転車を一掃しよう」などとタワケた議論を投げつけてくる場合であっても、道交法の理念を説き、世界での扱いを解説し、自転車の利点と美点を言い、自転車の権利を守ろうとし続けてきた。
しかし、それとこれとは話が別だ。日本の自転車の無法ぶり、傍若無人ぶりはヒドすぎる。
なぜ、ヘルメットをかぶり、誰もいない交差点でも赤信号でストップする品行方正運転のこの私が、「電ジャラス自転車」(※)のヤカラや、ドケドケ運転の逆走ママチャリの擁護をせねばならないのか。
※ナンバープレートを付けていない違法なモペッドや、最近合法化された「特定小型原動機付自転車」の歩道走行などを指す。詳しくは過去記事を参照。
すぐにでも一掃されてほしいというのが私の思いだった。
それなのに、私はなぜかあの連中のタテのような形になってきた。少なくともそう見られてきた。
■長年、警察が取り締まらなかった理由
実際、私などの自転車系ジャーナリストらはずーっと言い続けてきたのだ。自転車は右側通行をするな、信号、一時停止を守れ、とね。
しかし、警察が取り締まってくれなかった。こんなに迷惑で危険なのに放ったらかし。放置の理由のひとつに「自転車の青切符」がなかったことがある。
これまでの自転車取り締まりには行政処分(=青切符)がなかった。自転車の処分は常に刑事処分(=赤切符)で、つまり、処分なしか、重い処分(前科一犯)しか選択肢がなかったわけだ。だから警察は取り締まりを躊躇した。「傘差し運転で前科一犯」なんて、憲法に定められた「法の下の平等」にすら反する。クルマが反則金(行政処分)ですませられるのに、自転車は罰金(刑事処分)なんだから。だいたい警察が検挙したところで検察は起訴しない。
しかし、そのような状況を尻目に、実際に自転車事故は増えてきた。事故内容を見てみると、死亡や重傷事故になった7107件のうち73.2%で、自転車側に(も)信号無視、一時不停止といった交通違反が確認されている。自転車側の無法ぶりは明らかだった。
■玉石混交の「取り締まり112例」
これ以上の自転車野放しはイカン。ということで青切符導入。反則金は5000円~1万2000円というところだそうだ。今回の道交法改正案が成立すれば、公布から2年以内に施行される。
必然だと思う。私は大賛成だ。
ただし今回の閣議決定、やはり現場が分かってないというのか、現場の意見をいかしていないというか、要するに「机上の空論」感が否めない。一言でいうならメリハリがきいてない。
たとえば青切符を切る具体例というのがあるのだが、それが合計112例も挙げられている。その内容をつらつら見るに、私は「あー、やっぱり」と思った。具体策と理念がゴッチャになっているのだ。
これ、どういうことか解説していこう。
■危険な右側通行は今すぐ摘発してほしい
まずはここからだ。
◎信号無視
◎一時不停止
と、こういうのはいいのだ。青切符でも赤切符でもいいから、すぐにでも摘発してほしいと前々から思っていた。
特に右側通行(逆走)は明らかに自転車事故の元凶で、こんなのが野放しになっていたほうがおかしかったと思う。
なぜ右側通行が危険なのか。それは出合い頭事故の元凶になるからだ。そして、その出合い頭事故こそが、自転車対自動車事故のの54%を占めているのである(※)。
※警察庁「自転車対自動車事故における事故類型別自転車の死者・重傷者数(平成29年)」より
右側通行って「ついついやっちゃう」じゃすまない、絶対にやっちゃならないのである。
だいたい自転車以外の車両は、100%逆走なんてしない。なぜ自転車だけが許されると思っているのか、このあたりを青切符で知らしめていただきたい。
■スマホ見ながら運転なんてもってのほか
また時代を反映してか、こんなのもある。
このあたりも「いいね!」だ。特に「スマホ見ながら」運転なんてのはもってのほかで、喫緊の事故対策でもあると思う。
残りのふたつは「首都高紛れ込み」と「開かずの踏切行っちまえ」みたいなものを指している。
いずれも事故のもとだが、日々のニュースを見てれば分かる。外国人と高齢者が多い。いずれも「交通ルールを今ひとつ理解していない」人たちだろう。このあたりが今ドキだと思う。
■「自転車は歩道も可」としたのは警察
ところが次からがダメ。「ああ、やっぱり」というべきか、ここにこんなのが混じってくる。
〔歩道を通行すること・例外的に歩道を通行できる場合(=自歩道)でも徐行などをしないこと〕
◎ブレーキが利かない自転車に乗ること
◎傘を差したりイヤホンを付けたりしながら運転するなど
いや、悪いは悪いのだ。私なども1970年(昭和45年)からずーっと自転車の歩道通行はダメだと言い続けてきた。ま、1970年時点で私は4歳だったんだが、「自転車は歩道も可」と、道交法が改正されたのがこの年だということで。
具体策と理念がゴッチャになったというのがまさにここだ。
前出の1970年道交法改正からずっと、日本では「なんとなく自転車は歩道通行も可」とされてきた。その結果、ほぼすべてのママチャリが歩道を走っているのは日本人誰もが知っての通りだ。
また、歩道の徐行というのは、警察庁の解釈でいうと7.5km/h程度のスピードを指す。
一方、ママチャリの一般的な速度は10~15km/h。ロードバイクやクロスバイクはもっと速い。要するに、現在、歩道走行している自転車は全員違反だ。
これを全員取り締まるのか、と。
■「なんでも検挙」ではなくメリハリをつけるべき
たとえば歩道の子乗せママチャリを検挙して、反則金とって、「今後は車道を走りなさい」と言って、現在の日本のインフラのままで、そのママが次から車道を走るのか、と。
こういうことをやると、捕まった人は「単に運が悪かっただけ」になってしまい、せっかくの青切符に意味がなくなってしまう。
同様のことは、ブレーキ不良にも、傘にも、イヤホンにも言える。限られた「取り締まりのリソース」をそんなものに振り向けてどうする。それよりも今の喫緊の問題、すなわち「電ジャラス自転車」「逆走」「信号無視」「ケータイながら運転」のような明らかな「未来の事故のもと」を片付けるべきだろう。
要するに「検挙にメリハリをつける」べきなのだ。
切符を切るのは、事故に直接結びつく悪質な違反に限定し、それを確実になくす。
で、それ以外はまた後ほど(日本の自転車道・自転車レーンが十全に整備された後)というような姿勢をとるべきではないか。
でないと、またきっと元の木阿弥になる。私はそこを危惧する。
「青切符導入したけどダメでしたー」という未来が見える。
青切符がダメなんじゃない、優先順位をつけない、取り締まりの思考停止と稚拙がダメなのだ。
———-
自転車評論家
1966年生まれ。東京大学工学系大学院(都市工学)修了、博士(Ph.D.環境情報学)。学習院大学、東京都市大学、東京サイクルデザイン専門学校等非常勤講師。毎日12kmの通勤に自転車を使う「自転車ツーキニスト」として、環境、健康に良く、経済的な自転車を社会に真に活かす施策を論じる。NPO法人自転車活用推進研究会理事。著書に『ものぐさ自転車の悦楽』(マガジンハウス)、『自転車の安全鉄則』(朝日新聞出版)など多数。
———-
悠然と逆走するママチャリは通行規則の遵守を無視し、他の道路利用者に危険を与えています。
誰でも乗れてしまうのにも問題がるかもれませんね
制限するのは今更難しいのでしょうが
<このニュースへのネットの反応>