第二節 所有権の取得 民法第二百三十九条 (無主物の帰属)

第二節 所有権の取得 民法第二百三十九条 (無主物の帰属)

第二百三十九条 所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。

無主物先占の原則

民法第239条は、無主物先占という法律の原則を定めています。

簡単に言うと、誰のものでもない物(無主物)を、自分のものとして占有すれば、その物の所有権を得られるということです。

条文の意味

  • 所有者のない動産: 現時点で誰のものとも定まっていない、動産(土地以外の物)を指します。例えば、道端に落ちていた財布や、誰も管理していない野生の動物などが考えられます。
  • 所有の意思をもって占有: 単にその物を手にするだけでなく、「この物を自分のものにする」という意思を持って、その物を自分のものとして扱うことです。
  • 所有権を取得: その物を自分のものとして自由に使える権利を得ることです。

条文の趣旨

この条文の趣旨は、社会の効率的な資源配分にあります。誰のものでもない物が放置されている状態は、社会にとって無駄です。この条文によって、誰もが自由にその物を利用できるようになり、資源が有効活用されるようになります。

具体的な例

  • 道端に落ちている財布: 財布を見つけた人が、警察に届けることなく、自分のものとして使えば、その財布の所有権を取得できます。
  • 野生の動物: 狩猟のルールに従って捕獲した動物は、捕獲した人の所有物となります。

注意点

  • 遺失物: 遺失物は、必ずしも無主物ではありません。遺失物法の規定に従い、一定期間経過後に所有者が現れなければ、拾得者がその所有権を取得できます。
  • 不動産: 不動産は、この条項の適用除外です。所有者のいない不動産は、国庫に帰属します。

2 所有者のない不動産は、国庫に帰属する。

無主不動産の国庫帰属

民法第239条第2項は、「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」と定めています。

これは、誰のものでもない土地や建物は、最終的に国のものになるということを意味しています。

なぜ国庫に帰属するのか?

  • 社会秩序の維持: 土地は、社会生活の基礎となるものです。無主の状態で放置されると、境界線争いや、不法占拠などの問題が生じる可能性があります。これを防ぐために、国が所有権を持つことで、土地の管理や利用を適切に行うことができます。
  • 国土の有効活用: 無主の土地は、放置されることで荒廃したり、有効活用されずに社会的な損失をもたらす可能性があります。国が所有することで、その土地を有効活用し、社会全体の利益に繋げることができます。

具体的な例

  • 相続放棄: 相続人がいなく、相続財産として土地が残された場合、その土地は国庫に帰属します。
  • 放置された土地: 長い間、誰も管理していない土地は、時効取得などの要件を満たせば、国がその所有権を取得できます。

注意点

  • 動産との違い: 動産(土地以外の物)は、先占によって個人でも所有権を取得できますが、不動産は国庫に帰属するという点が異なります。
  • 所有権の放棄: 私人が故意に土地の所有権を放棄することは、原則として認められていません。

まとめ

民法第239条第2項は、無主の不動産が国庫に帰属するという、不動産に関する重要なルールを定めています。
この条文は、社会秩序の維持や国土の有効活用といった観点から、非常に重要な役割を果たしています。

もし、ご自身の土地に関することで何かご心配なことがあれば、弁護士や司法書士にご相談ください。

続きを見る