第五節 条件及び期限 民法第百二十七条 (条件が成就した場合の効果)

第五節 条件及び期限 民法第百二十七条 (条件が成就した場合の効果)

民法第127条「停止条件付法律行為」の解説

条文の意味

民法第127条は、法律行為の効果の発生が、将来の不確かな事実に依存する場合(条件付法律行為)における、その効力の発生時期を定めています。

具体的に言うと、停止条件付法律行為とは、ある条件が満たされた時に初めて効力が発生するような法律行為のことです。この条文は、その「条件が満たされた時」が、まさにその法律行為が有効になる瞬間であると定めているのです。

停止条件付法律行為の例

  • 「Aさんが大学に合格したら、車をプレゼントする」という約束: この場合、Aさんの大学合格が「停止条件」です。Aさんが実際に大学に合格した時点で、贈与の約束が有効になります。
  • 「新築のマンションが完成したら、売買契約を結ぶ」という契約: マンションの完成が「停止条件」です。マンションが完成した時点で、売買契約が有効になります。

停止条件が成就した場合の効果

この条文のポイントは、停止条件が成就した時から効力が生じるということです。つまり、条件が満たされた瞬間から、その法律行為は最初から有効であったかのように扱われます。

重要な点

  • 遡及効果はない: 一般的に、条件が成就した効果は、その成就した時以降にしか及びません。過去にさかのぼって効力が発生することはありません。
  • 条件の解釈: 停止条件の内容は、当事者の意思表示や契約の内容から具体的に解釈する必要があります。
  • 条件の成就の証明: 停止条件が成就したことを証明する責任は、その効力を主張する者にあります。
2 解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。

民法第127条第2項「解除条件付法律行為」の解説

条文の意味

民法第127条第2項は、解除条件付法律行為が、その効力を失う条件について定めています。

解除条件付法律行為とは、ある条件が満たされた時に、それまで有効であった法律行為が無効になるような法律行為のことを指します。

この条項は、その「条件が満たされた時」が、まさにその法律行為が効力を失う瞬間であると定めているのです。

解除条件付法律行為の例

  • 「Aさんが大学に合格しなかったら、奨学金を支給する」という約束: この場合、Aさんが大学に合格しないことが「解除条件」です。Aさんが大学に合格した時点で、奨学金を支給するという約束はなくなります。
  • 「新築のマンションが予定の価格を超えたら、売買契約を解除する」という契約: マンションの価格が予定価格を超えることが「解除条件」です。価格が予定価格を超えた時点で、売買契約は解除されます。

解除条件が成就した場合の効果

この条文のポイントは、解除条件が成就した時から効力を失うということです。つまり、条件が満たされた瞬間から、その法律行為は最初から無効であったかのように扱われます。

重要な点

  • 遡及効果はない: 一般的に、解除条件が成就した効果は、その成就した時以降にしか及びません。過去にさかのぼって効力がなくなることはありません。
  • 条件の解釈: 解除条件の内容は、当事者の意思表示や契約の内容から具体的に解釈する必要があります。
  • 条件の成就の証明: 解除条件が成就したことを証明する責任は、その効力を主張する者にあります。

停止条件付法律行為との違い

1項の「停止条件付法律行為」と比較すると、

  • 停止条件: 条件が成就すると法律行為が有効になる
  • 解除条件: 条件が成就すると法律行為が無効になる

という点が異なります。

3 当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。

条文の意味

民法第127条第3項は、条件付法律行為において、当事者が条件成就の効果を過去に遡らせる意思表示をした場合、その意思に従うことができるという規定です。

一般的に、法律行為の効果は、その効力が発生した時点から未来に向かって効力を生じます。しかし、この条項は、当事者間の合意によって、その効果を過去に遡らせることができる例外を認めています。

遡及効果の例

  • 贈与契約: AさんがBさんに「大学に合格したら、100万円を贈与する」という約束をしたとします。Aさんが大学に合格した後に、「合格した日から1年間分の生活費として、毎月8万円をさかのぼって支払ってほしい」と要求した場合、この条項に基づいて、Bさんはその要求に応じなければなりません。

遡及効果が認められる理由

  • 当事者の意思尊重: 当事者間の合意に基づいて、法律関係を柔軟に構築することを認めることで、実務上の便宜を図ることを目的としています。
  • 法律関係の確定: 過去にさかのぼって法律関係を確定させることで、不確実な状態を解消し、当事者間の紛争を防止する効果も期待できます。

注意点

  • 制限: 遡及効果は、他の法律に反したり、第三者の権利を侵害したりする場合には認められません。
  • 意思表示の明確性: 遡及効果を主張する当事者は、その意思表示を明確にしなければなりません。
  • 濫用防止: この条項は、当事者の自由な意思に基づくものではありますが、濫用を防ぐために、客観的な事情を考慮して判断される必要があります。

まとめ

民法第127条第3項は、条件付法律行為において、当事者間の合意によって、その効果を過去に遡らせることができるという例外的な規定です。
この条項は、当事者の意図を尊重しつつ、法律関係を確定させる上で重要な役割を果たしています。

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