民法第百七条 (代理権の濫用)
民法第百七条 (代理権の濫用)
第百七条 代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。
民法第107条の解説:代理権の濫用
条文の意味
民法第107条は、代理人が、本人ではなく自分自身または第三者の利益のために、代理権の範囲内の行為をした場合、取引の相手方がそのことを知っていたり、知ることができたりすると、その行為は無権代理とみなされる、という内容を定めています。
簡単に言うと、代理人が本来の仕事である「本人のために働く」ことをせずに、自分の利益や他の人の利益のために仕事をした場合、相手方がそのことを知っていれば、その行為は無効になる可能性があるということです。
条文のポイント
- 代理権の範囲内の行為: 代理人が本来できる範囲の仕事をしていること。
- 自己又は第三者の利益: 代理人が自分の利益や他の人の利益を求めていること。
- 相手方の認識: 相手方が代理人の目的を知っていたり、知ることができたりすること。
- 無権代理: 代理権を持っていない人が行った行為とみなされること。
なぜこのような規定があるのか
この規定があるのは、代理権の濫用を防ぐためです。代理人は、本人のために忠実に働くべきであり、自分の利益を優先させてはなりません。この条文は、代理人が不正な行為をすることを防ぎ、取引の安全性を確保することを目的としています。
具体的なケース
- 不動産売買: 不動産会社が、顧客に建物を売却する際、実はその建物に大きな欠陥があることを知りながら、それを隠して売却した場合。
- 会社法: 会社の取締役が、自らが経営する別の会社から高額な商品を購入する契約を結んだ場合。
まとめ
民法第107条は、代理人が自分の利益のために不正な行為をした場合、その行為が無効になる可能性があることを定めています。
これは、代理人が本人のために忠実に働くべきだという原則に基づいています。