民法第八十六条 土地及びその定着物は、不動産とする
民法第八十六条 土地及びその定着物は、不動産とする
民法第86条の解説
民法第86条は、不動産の定義を定めた条文です。民法第85条で「物」が有体物と定義された上で、この第86条で「物」の中でも特に不動産と動産に区分されています。
不動産とは?
この条文によると、「不動産」とは、土地および土地に定着している物を指します。
- 土地: 地表面だけでなく、その上下を含む立体的な概念です。
- 定着物: 土地にしっかりと固定され、容易に移動できない物です。建物、樹木、橋、石垣などが代表的な例です。
なぜ不動産と動産を分けるのか?
不動産と動産を分ける理由は、法律上の取扱いが大きく異なるからです。
- 所有権の移転: 不動産の所有権の移転は、原則として登記が必要です。一方、動産の所有権の移転は、原則として登記は不要です。
- 担保: 不動産は、抵当権などの担保に利用されることが多く、動産に比べて担保価値が高いとされています。
- 相続: 不動産は、相続の際に分割が複雑になることがあり、動産に比べて相続手続きが煩雑になる場合があります。
不動産と動産の境界線
不動産と動産の境界線は、必ずしも明確ではありません。例えば、庭石などは、土中に埋め込まれているため、不動産と見なされる場合もあれば、動産と見なされる場合もあります。
重要なポイント
- 定着物とは: 土地に定着しているかどうかが、不動産か動産かを判断する上で重要な要素となります。
- 建物の扱い: 建物も、土地に定着しているため、不動産とみなされます。
- 登記: 不動産の所有権は、登記簿に登録することで初めて第三者に対抗できるようになります。
民法第86条は、不動産の概念を規定することで、不動産に関する様々な法律関係を明確にする役割を果たしています。
不動産取引や相続など、不動産に関する法律問題を考える際には、この条文を理解することが重要です。
2 不動産以外の物は、すべて動産とする。
民法第86条の補足:動産について
民法第86条の解釈
民法第86条は、「土地及びその定着物は、不動産とする。」と定めていますが、この条文の対比として、不動産以外の物は、すべて動産とするという解釈が一般的です。
動産とは?
動産とは、不動産に該当しないすべての物を指します。具体的には、以下のものが挙げられます。
- 土地に定着していない物: 家具、自動車、機械、書籍など
- 有価証券: 株式、債券など
- お金: 紙幣、硬貨など
不動産と動産の区分の重要性
不動産と動産を正確に区別することは、以下の点で重要です。
- 所有権の移転方法: 不動産の所有権の移転には登記が必要ですが、動産の場合は原則として登記は不要です。
- 担保設定: 不動産は、抵当権などの担保に利用できますが、動産の場合は、質権などの担保が利用されます。
- 相続: 不動産は、相続の際に分割が複雑になることがあり、動産に比べて相続手続きが煩雑になる場合があります。
- 税金: 不動産には固定資産税などが課税されますが、動産には別の税金が課税される場合があります。
不動産と動産の境界線に関する注意
- 準不動産: 一部の動産は、不動産と同様の性質を持つことから、準不動産と呼ばれることがあります。例えば、船舶や航空機などは、動産ですが、その大きさと性質から、不動産と同様の法律が適用される場合があります。
- 定着物と動産の区分: 土地に定着しているかどうかが、不動産か動産かを判断する上で重要な要素となりますが、その程度が問題となるケースもあります。
まとめ
不動産と動産の区分は、民法における物の分類の基本であり、様々な法律関係に影響を及ぼします。
不動産と動産の区別を正しく理解することは、法律問題を解決する上で非常に重要です。