民法第二十七条 (管理人の職務)
民法第二十七条 (管理人の職務)
民法第27条の解説
条文の意味
「第二十七条 前二条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。」
この条文は、裁判所が選任した管理人が、不在者の財産について、財産目録を作成する義務があること、そしてその費用は不在者の財産から支払われるということを定めています。
具体的に言うと、
- 管理人の義務: 裁判所から管理人に任命された人は、自分が管理することになった財産を全て書き出したリスト(財産目録)を作成しなければなりません。
- 費用の負担: この財産目録を作成するための費用は、不在者の財産から支払われます。
この条文の目的
- 財産状況の明確化: 不在者の財産がどのようになっているのかを明確にすることで、管理人が適切に財産を管理できるようにするためです。
- 透明性の確保: 財産目録を作成することで、財産の管理状況を透明化し、不正を防ぐことを目的としています。
財産目録に記載される内容
一般的に、財産目録には以下の内容が記載されます。
- 不動産: 土地、建物など
- 動産: 車、家具、預金など
- 債権: 他人から受け取るべきお金(貸金など)
- 債務: 他人に支払うべきお金(借金など)
民法第27条は、財産目録の作成が、不在者の財産管理において非常に重要な手続きであることを示しています。
財産目録は、管理人が財産を適切に管理するための基礎となるものであり、また、将来、不在者が発見された場合や、相続が発生した場合にも重要な資料となります。
民法第27条第2項の解説
条文の意味
「2 不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。」
この条文は、不在者がすでに管理人を置いていた場合でも、その不在者の生死が不明で、利害関係人や検察官が裁判所に申し立てたときには、裁判所がその管理人に対しても財産目録の作成を命じることができるという規定です。
具体的に言うと、
- 不在者が自ら管理人を選んでいた場合: 不在者が、自分の財産を管理する人を決めていたとしても、
- その不在者の生死が分からない場合: 不在者が生きているのか、亡くなっているのかがはっきりしない場合、
- 利害関係人や検察官が裁判所に申し立てをしたとき: 不在者の家族や債権者など、この状況に関わる人が裁判所に申し立てをすることで、
- 裁判所は、その管理人にも財産目録の作成を命じることができます。
この条文の目的
- 財産状況の明確化: 不在者の財産がどのようになっているのかを明確にすることで、管理人が適切に財産を管理できるようにするためです。
- 透明性の確保: 財産目録を作成することで、財産の管理状況を透明化し、不正を防ぐことを目的としています。
- 管理人の責任強化: 管理人に財産目録の作成を義務付けることで、管理人の責任を明確化し、適切な財産管理を促すことを目的としています。
民法第27条第2項は、不在者が自ら選定した管理人に対しても、裁判所が財産目録の作成を命じることができるという規定です。
これは、不在者の財産を適切に管理し、利害関係人の権利を保護するために、裁判所がより厳格な管理を求めることができるという点で、重要な意義を持ちます。
民法第27条第3項の解説
条文の意味
「3 前二項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。」
この条文は、裁判所が、管理人に対して、財産目録の作成以外にも、不在者の財産を保存するために必要なと判断した様々な処分を命じることができるという規定です。
具体的に言うと、
- 財産目録の作成以外にも: 裁判所は、管理人に対して、財産目録の作成だけでなく、
- 財産の保存に必要な処分: 不在者の財産が損なわれたり、価値が下がるのを防ぐために必要な様々な処分を命じることができます。
具体的な処分の例
- 不動産の売却: 不動産が老朽化していて維持費がかかる場合など、不動産を売却して現金化することが必要と判断される場合。
- 債権の回収: 不在者に貸しているお金(債権)がある場合、その回収を命じることがあります。
- 債務の弁済: 不在者が借金(債務)をしている場合、その債務を弁済することが必要と判断される場合。
- 保険金の請求: 不在者が加入していた保険がある場合、保険金請求の手続きを進めることが必要と判断される場合。
この条文の目的
- 財産の保全: 不在者の財産が失われるのを防ぎ、その価値を維持することを目的としています。
- 債権者の保護: 不在者に債権がある場合、その債権が回収できなくなることを防ぐことを目的としています。
まとめ
民法第27条第3項は、裁判所が、管理人に対して、財産目録の作成以外にも、様々な処分を命じることができるという、非常に幅広い規定です。
これは、不在者の財産を適切に管理し、その権利を保護するために、裁判所に大きな裁量を与えていると言えるでしょう。