「ルール無視のバカ自転車」はどうすれば撲滅できるのか…有効そうな「自転車免許」ではまったく意味がない理由

「ルール無視のバカ自転車」はどうすれば撲滅できるのか…有効そうな「自転車免許」ではまったく意味がない理由

交通ルールを守らない自転車を撲滅するにはどうすればいいか。自転車評論家でジャーナリストの疋田智さんは「免許制を導入すればいいという人がいるが、原付免許より簡単な免許をつくっても税金の無駄だろう。それよりも、『自転車は車両である』と子どもから大人まで教育する場を設けるべきだ」という――。

■「自転車免許」導入を望み続ける人たち

街中でペダルを回さずに爆走する「電ジャラス自転車(※)の蔓延(まんえん)と、「青切符」の導入を盛り込んだ道路交通法改正あたりから、またぞろこんな話を聞くようになった。

ナンバープレートを付けていない違法なモペッドや、最近合法化された「特定小型原動機付自転車」の歩道走行などを指す。詳しくは過去記事を参照。

自転車が危険だ」「邪魔だ」「ルールを守らない」……「だから、自転車にも免許を!」

これはもう、ピストブーム(2007年前後)あたりから、何度も出ては消え、出ては消え、してきた話で、自転車のことをちょっと囓(かじ)った人なら、だれもが一度は考える話だ。一度は、ね。

私なども地方講演などに行ったりするたびに聞く。「免許こそすべての解決策」とばかりに、強硬に主張する地元県議さんなどがいらっしゃったりする。

彼らは「自転車は車道を走るべき」ということは、さすがにすでにご存じで(自転車は歩道じゃなかったっけ? などという論外な人々とは一線を画している)、その上で「同じ車道を走るならば、一般車両と同じく、免許が必要だろう」ということを、主張なさっている。

■8184万人は「免許」をすでに持っている

なるほどと思う。一瞬だけ。

で、想像してみるわけだ。

「免許? 自転車免許ってどんなのになるのかな。……というか持っているよ」とね。

筆者だけじゃない。多くの人は自転車免許をすでに持っている。なぜなら普通自動車免許で原付(原動機付自転車)を運転できるから。

あれ?

そうなのだ。自転車に乗って無法行為をする人々だって半数以上は、じつはクルマの免許を持っている。

なにせ、2022年末時点で運転免許を持っている人は8184万人もおり、16歳以上の人口の74.8%を占めているのだから。

■自転車を免許制にしている国はない

クルマ免許を持っていても、自転車に乗るときだけは右側通行上等、信号無視OK、の無法者になる。

それが日本の自転車状況のリアルであり本質なのだ。……ということは免許で変わるだろうか? いや、普通に考えて変わらんだろう。

それに、ちょっと考えてみよう。自転車に乗るのに免許を必要とする国など、世界のどこにもない、という事実を、だ。

なぜないのだろう? そこには理由があるのである。

まずは、そもそもの免許、つまり「国家が○○することを免じて、許す」という意味をまずは考えなくてはなるまい。

クルマの免許というのは、国が「移動手段の自由」を制限することの裏返しだ。ではなぜ制限するのか。それはクルマというものはそのまま走らせるには危なすぎるから。

クルマは危険だから、基本的に公道を走ってはならないものである、と、これが基本だ。

■「免じて許す」の意味を考えよ

だが、そうして「全部、ダメ」とするには、クルマは、あまりに便利で、あまりに社会の利益に資する点が多すぎる。

であるからして、クルマを安全に運転するだけの技量を有し、運転するに際してのルール厳守を誓った者だけに、一般公道をクルマで通行することを“免じて”“許す”。

これが免許だ。

あえて刺激的な言い方をするなら、クルマというものは、免許が必要なほどに、危険で未完成なものなのである。

だから「こちとら免許があるんだ、ドケドケ自転車」みたいな考えは根本から間違っている。免許があるからエラい、のではなく、免許が必要なほどにエラくない。

「車道を走る以上、免許が必要だ」ではない。「人にぶつけたら殺人、建物にぶつかったら大破壊、他者に対しての危険が著しく大きい車両だから、免許が必要だ」が正解なのだ。自転車はどうかな?

……とまあ、話はこれで終わっているくらいなのだけど、そこはそれ、頭の体操として考えてみよう。

自転車に免許? それはいったいどんな免許になるのだろう。

■「バカでもとれる免許」をつくっても無駄

では、免許制にしたとする。

試験はどうしよう。実技は? 筆記は? 参考にすべきはもちろん原動機が付いているほうの自転車だ。

50cc以下のオートバイ、いわゆる原付バイクについては、免許がある。基本的な交通法規のみ、ペーパーテストオンリー。実技なし。誰から見たって「日本一簡単な免許」である。だから何も勉強しないで受ける人が多いのだが、それでも合格率は約6割になる。

もしも自転車免許というものを作ったとするなら、その免許はどう考えても、このククリより簡単なものではなくてはならない。

なぜなら、自転車によって惹起(じゃっき)されるであろう事故は、原付よりも軽いからだ。

事故時の衝突エネルギーは「質量×スピードの二乗」で計算される。自転車は原付の数分の一の車重しかなく、原付よりもはるかにスピードが出ないのはご存じの通りだ。

となると、自転車通行を「免じて」「許す」ハードルは原付よりも低いものでなくてはならない。大型トラックと一般乗用車の免許が違うのと同じだ。

ということは、どうなる。日本一簡単な、いわばバカでも通る試験よりも、さらに簡単な試験を課さねばならないだろう。そんな免許はないのと同じだ。ないのと同じ試験を課すのは、ただの無駄だろう。

ところが、そうした“無駄な”免許であっても、制度を作り、試験を課し、それを国家のシステムとするには、そこにもまた役所(ナントカ法人)が必要になり、役人が必要になり、つまりはそこに税金が投じられるわけだ。

この余裕のない現代ニッポンで、そんな無駄をやってどうする。

■免許ではない「いまやるべきこと」

「免許」というより前に、やるべきことの一番手は、何といっても「教育」だろう。

そもそもこの国では、自転車に関する教育がなさすぎる。教育が「なってない」のではなく、教育が「存在しない」のだ。

左側通行の原則も守らず、車道か歩道かもなく、どうしたときに事故が起きるかも知らず、その結果の悲惨さも知らない。

そこに電ジャラス自転車ブームなどが起きれば、車道の自転車デタラメになるのは当たり前の話なのだ。

■「自転車は歩行者とは違う」と叩きこむ

まずは教育。

何よりまず「自転車歩行者とは違う」「自転車は車両である」という教育こそが先決だ。自転車歩行者の仲間と思っているからクルマの免許を持っていても「自転車はいいだろう」という甘えが出てくるわけで。

教育の場がない、場がないというが、場を作ろうとしないから、ないだけだ。学校で、自動車の教習所で、免許の書き換え時、住民登録の際、やれる場はいくらでも作れる。

その際に「自転車はこうあるべし」と教える。こんなに国民教育の平均値が高い国で、なぜそれができない。やろうとしないからだ。

免許というものは、教育がまずありきで、それでも無理なとき、はじめて議論すべき制度だろう。それをせずして免許というのは、もうこれは仕事を増やし、天下り先を増やそうとする(?)どこかの不埒(ふらち)な役人のワルダクミとしか思えない。

先述したように、そもそも海外に「自転車免許がある国」がどこにあるか。どこにもないのだ。なぜこの日本でだけ自転車免許が必要なのか。その理由をもっとよく考えていただきたいものだ。

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疋田 智(ひきた・さとし
自転車評論家
1966年生まれ。東京大学工学系大学院(都市工学)修了、博士(Ph.D.環境情報学)。学習院大学東京都市大学、東京サイクルデザイン専門学校等非常勤講師。毎日12kmの通勤に自転車を使う「自転車ツーキニスト」として、環境、健康に良く、経済的な自転車を社会に真に活かす施策を論じる。NPO法人自転車活用推進研究会理事。著書に『ものぐさ自転車の悦楽』(マガジンハウス)、『自転車の安全鉄則』(朝日新聞出版)など多数。

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車道を逆走する自転車 – 筆者撮影

(出典 news.nicovideo.jp)

自転車の乗り方に関する規制強化には、長年の黙認という歴史的な壁と、膨大な台数と所有者という現実的な壁が存在します。
しかし、安全確保や社会全体の利便性向上という観点から、解決策を模索していくことは不可欠です。

1. 段階的な規制強化と社会的な合意形成

いきなり全ての自転車を取り上げるのではなく、まずは歩行者や車との接触事故が多い場所や時間帯に限定した規制強化から始め、徐々に範囲を広げていく方法が考えられます。
同時に、自転車利用者向けの教育プログラムの充実や、安全なインフラ整備など、規制と並行してインセンティブを与えることも重要です。

2. 所有者への丁寧な説明と協力依頼

自転車を取り上げるという強硬手段ではなく、安全な利用に向けた協力依頼というスタンスで臨むことが重要です。
その際、規制の目的や必要性を丁寧に説明し、所有者自身が安全意識を高めるよう促す必要があります。

3. 代替手段の充実とインセンティブ

自転車は多くの人にとって重要な移動手段であり、生活の一部となっています。
そのため、自転車を取り上げる際には、公共交通機関の充実や、シェアサイクルの普及など、代替手段をしっかりと整備する必要があります。
さらに、自転車の安全運転を奨励するポイント制度など、インセンティブを導入することで、所有者の協力を得られる可能性は高くなります。

4. 技術を活用した安全対策

AIやIoTなどの技術を活用することで、自転車の危険な走行を検知したり、事故を未然に防いだりするシステムの開発も期待できます。

5. 長期的な視点と柔軟な対応

自転車の乗り方に関する規制強化は、一朝一夕に成し遂げられるものではありません。
長期的視点に立ち、社会情勢や技術の発展に合わせて柔軟に対応していくことが重要です。

6. 多様な意見を取り入れる

自転車利用者、行政、警察、交通安全団体など、多様な関係者からの意見を積極的に聞き取り、議論を重ねることで、より効果的な解決策を見出すことができます。

7. 国際的な事例の参考

自転車先進国では、様々な規制や対策が実施されています。
これらの事例を参考にすることで、日本に合った最適な解決策を見つけるヒントが得られる可能性があります。

これらの点を踏まえ、時間をかけて丁寧に社会的な合意形成を図り、段階的に規制を強化していくことが重要です。

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