民法第二百五十八条の二 相続によって取得した共有物について

民法第二百五十八条の二 相続によって取得した共有物について

第二百五十八条の二 共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について前条の規定による分割をすることができない。

民法第258条の2は、相続によって取得した共有物について、特別なルールを定めています。

簡単に言うと、相続によって得た共有物については、原則として、民法第258条(一般の共有物の分割に関する規定)の分割方法をすぐに適用できないということです。

なぜこのような規定があるのか?

相続は、家族や親族間で行われることが多く、感情的な問題が絡み合うことがあります。そのため、共有物の分割を急ぐよりも、相続人同士で話し合い、遺産分割協議書を作成し、円満に分割を行うことが望ましいとされています。

具体的にどのような場合に適用されるのか

  • 相続財産である場合: 相続によって取得した共有物に限って、この条文が適用されます。
  • 遺産分割協議中の場合: 相続人同士で遺産分割協議を行っている間は、この条文が適用されます。

10年経過後の例外

この条文には例外があり、相続開始から10年が経過した場合は、民法第258条の規定による分割を請求できるとされています。これは、相続開始から長期間が経過しても遺産分割が完了しない場合に、共有関係を解消するための規定です。

まとめ

民法第258条の2は、相続による共有物については、他の共有物とは異なる特別なルールが適用されることを定めています。
これは、相続人同士が円満に遺産分割を行うための配慮から設けられた規定です。

2 共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から十年を経過したときは、前項の規定にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について前条の規定による分割をすることができる。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について同条の規定による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない。

民法第258条の2第2項は、相続によって得た共有物について、10年という期間経過後に、特別な条件下で、通常の共有物の分割ルール(民法第258条)を適用できるという例外規定です。

具体的にどのような場合に適用されるのか

  • 相続開始から10年経過: 相続が発生した日から10年が経過していること。
  • 遺産分割の請求がないか、または異議なし: 相続人が遺産分割を請求していないか、または請求があっても他の相続人が分割に異議を申し立てていない場合。

なぜ10年という期間が定められているのか

相続直後は、相続人同士の関係が複雑であったり、感情的な問題が絡み合っていることが多く、共有物の分割を急ぐことは必ずしも良いことではありません。そのため、10年という期間を設けることで、相続人たちが冷静に話し合い、円満な解決を図る時間を与えることを目的としています。

10年経過後の分割のメリットとデメリット

  • メリット:
    • 共有関係が長期にわたって続くことで生じる不利益(例えば、売却や処分ができないなど)を回避できる。
    • 相続人全員が同意すれば、より迅速に分割手続きを進めることができる。
  • デメリット:
    • 10年経過後でも、相続人全員が分割に同意しない場合は、裁判手続きが必要になる場合がある。
    • 長期間が経過しているため、共有物の状況が変化している可能性があり、分割が複雑になる場合がある。

3 相続人が前項ただし書の申出をする場合には、当該申出は、当該相続人が前条第一項の規定による請求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から二箇月以内に当該裁判所にしなければならない。

民法第258条の2第3項は、相続人が分割に異議を申し立てる場合の期間を定めています。

具体的には、相続人が、民法第258条(一般的な共有物の分割)に基づいた分割の請求を受けた場合、2ヶ月以内に裁判所に異議を申し出なければなりません。

なぜ2ヶ月という期間が定められているのか?

  • 分割手続きの迅速化: 分割手続きを長期化させないため、異議申し立ての期間を明確に定めています。
  • 他の相続人への配慮: 分割を希望する相続人にとっては、早期に手続きを進めたいという意向があるため、異議申し立ての期間を限定することで、他の相続人への配慮も考慮されています。

異議申し立ての手続き

  • 期間: 請求を受けた日から2ヶ月以内
  • 相手方: 請求があった裁判所
  • 内容: 分割に異議がある旨を明確に記載する

異議申し立ての効果

異議申し立てが有効であれば、民法第258条の規定による分割は行われず、遺産分割協議が継続されることになります。

まとめ

民法第258条の2第3項は、相続による共有物の分割において、相続人同士の紛争を早期に解決するために、異議申し立ての期間を定めた規定です。
この規定を守ることで、分割手続きが円滑に進み、相続人間のトラブルを防止することができます。

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