民法第二百四十六条 加工による所有権の帰属

民法第二百四十六条 加工による所有権の帰属

第二百四十六条 他人の動産に工作を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属する。ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する。


民法第246条
は、他人の動産に加工を施した場合に、その加工物の所有権が誰に帰属するかを定めています。

簡単に言うと、原則として、材料の所有者が加工物の所有権を持つということです。
しかし、加工によって生み出された価値が、元の材料の価値を大幅に超える場合には、加工者がその加工物の所有権を取得できるという例外が設けられています。

条文のポイント

  • 加工者: 他人の動産に加工を施した者を指します。
  • 材料: 加工の対象となった動産を指します。
  • 工作によって生じた価格: 加工によって付加された価値を金額で表したものです。
  • 著しく超える: 材料の価格と比較して、加工によって生じた価格がどれくらい高くなれば「著しく超える」と判断されるのかは、個々のケースによって異なります。

条文の趣旨

この条文の趣旨は、加工によって生み出された新たな価値に対する貢献を評価することにあります。
材料の所有者は、その材料を提供したという貢献に対して、原則として加工物の所有権を持つことになります。
しかし、加工者が高度な技術や労力を投入して、材料の価値を大幅に高めた場合には、その貢献を認め、加工者に所有権を与えるという考え方が根底にあります。

具体的な例

  • 木彫りの彫刻:
    • 他人の木に彫刻を施した場合、原則として木の所有者が彫刻の所有権を持ちます。しかし、彫刻が非常に高度な技術で作られており、木の価値をはるかに超える場合、彫刻家がその彫刻の所有権を取得できる可能性があります。
  • 自動車の改造:
    • 中古の自動車に改造を施した場合、原則として自動車の所有者が改造後の車の所有権を持ちます。しかし、改造によって車の価値が大幅に上昇した場合、改造業者がその車の所有権を取得できる可能性があります。

2 前項に規定する場合において、加工者が材料の一部を供したときは、その価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料の価格を超えるときに限り、加工者がその加工物の所有権を取得する。

民法第246条第2項は、加工者が材料の一部を提供した場合の、加工物の所有権の帰属について定めています。

簡単に言うと、加工者が材料の一部を提供した場合には、加工者が提供した材料の価格と、加工によって生み出された価値を合わせた金額が、他人の材料の価格を上回ったときに初めて、加工者が加工物の所有権を取得できるということです。

第1項との違い

  • 第1項: 加工者が材料を一切提供せず、他人の材料にのみ加工を施した場合のルールです。
  • 第2項: 加工者が材料の一部を提供した場合のルールです。

条文のポイント

  • 材料の一部: 加工者が提供した材料は、全体の材料の一部である必要があります。
  • 価格の比較: 加工者が提供した材料の価格と加工によって生じた価格の合計額が、他人の材料の価格を上回ることが条件です。

条文の趣旨

この条文の趣旨は、加工者が提供した材料の価値も考慮することにあります。
第1項では、加工者が提供した材料がなかったため、加工によって生み出された価値のみを評価していました。
しかし、第2項では、加工者が一部の材料を提供しているため、その材料の価値も考慮して、より公平な判断をする必要があるという考えに基づいています。

具体的な例

  • 家具の製作:
    • Aさんが自分の持っている木材の一部と、Bさんが持っている木材の一部を組み合わせて、テーブルを作った場合、Aさんが提供した木材の価格と、テーブルの製作によって生み出された価値の合計額が、Bさんが提供した木材の価格を上回ったときに、Aさんがそのテーブルの所有権を取得できます。

まとめ

民法第246条第2項は、加工者が材料の一部を提供した場合の、より具体的なルールを定めています。
この条文は、加工に関する様々な契約やトラブルを解決するために、重要な役割を果たしています。

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