民法第二百三十条 一棟の建物を構成する障壁

民法第二百三十条 一棟の建物を構成する障壁

第二百三十条 一棟の建物の一部を構成する境界線上の障壁については、前条の規定は、適用しない。

民法第230条の解説:一棟の建物を構成する障壁

条文の意味

民法第230条は、一棟の建物の壁の一部が、ちょうど隣地との境界線になっている場合、その壁は、前の条文(第229条)で定められている「相隣者の共有」というルールが適用されない、ということを定めています。

簡単に言うと、一つの建物が二つの土地にまたがって建っていて、その建物の壁がちょうど境界線になっているような場合、その壁は、両方の土地の所有者が共同で所有しているとは限らないということです。

条文の解説

  • 一棟の建物の一部を構成する:一つの建物の一部として作られている
  • 境界線上の障壁:隣地との境界線に沿って作られた壁
  • 前条の規定は、適用しない:民法第229条(境界線上のものが相隣者の共有と推定される)は適用されない

条文の目的

この条文の目的は、建物の構造上の特殊性を考慮し、現実的なルールを定めることです。

例えば、一棟の建物の壁が、ちょうど境界線になっている場合、その壁を取り壊すことは、建物の構造上困難であったり、建物の価値を著しく低下させる可能性があります。
このような場合、第229条のルールをそのまま適用してしまうと、建物の所有者が不当な負担を強いられる可能性があります。

具体的な事例

  • マンションの一室の壁:マンションの一室の壁が、ちょうど隣室との境界線になっている場合。
  • 一軒家の壁:一軒家が二つの土地にまたがって建っていて、その壁がちょうど境界線になっている場合。

注意点

  • 建物の構造との関係:この条文は、建物の構造との関連で解釈されることが多く、個々のケースによって、適用されるかどうかが異なります。
  • その他の法規との関係:建築基準法など、他の法律の規定も考慮する必要があります。

2 高さの異なる二棟の隣接する建物を隔てる障壁の高さが、低い建物の高さを超えるときは、その障壁のうち低い建物を超える部分についても、前項と同様とする。ただし、防火障壁については、この限りでない。

民法第230条の補足解説:高低差のある建物の場合

条文の意味を深掘り

この条文は、民法第230条の例外的なケースについて規定しています。

具体的には、

  • 高低差のある建物: 隣り合う建物が、高さが異なる場合
  • 障壁の高さ: 障壁の高さが、低い方の建物の高さを超えている場合

このような状況においても、その障壁の低い建物を超える部分についても、原則として、民法第230条と同様に、一棟の建物を構成する障壁とみなされ、相隣者の共有とはならない、と定めています。

ただし、防火壁についてはこの限りではありません。 防火壁は、火災の延焼を防ぐための重要な設備であり、その性質上、特別な扱いを受けるということです。

なぜこの条文が必要なのか?

  • 建物の構造の特殊性: 高低差のある建物では、必ずしも境界線が建物の壁と一致するとは限りません。
  • 建物の安定性: 高い方の建物の壁が低い方の建物を支えている場合もあり、構造上一体となっている可能性があります。
  • 防火対策: 防火壁は、建物の安全性を確保するために重要な設備であり、他の障壁とは性質が異なるため、別途規定が必要となります。

具体的な事例

  • 2階建てと3階建てのマンション: 3階建てのマンションの壁が、2階建てのマンションの屋根を越えて建っている場合。
  • 傾斜地に建つ家: 傾斜地にある家同士で、高さが異なる場合。

これらの場合、高い方の建物の壁の一部が低い方の建物の敷地内にあっても、その部分は、原則として高い方の建物の所有者に属すると考えられます。

注意点

  • 防火壁の例外: 防火壁は、火災の延焼を防ぐために設置されるものであり、建物の構造を支える役割も担うことがあります。そのため、防火壁については、建築基準法などの他の法規も考慮する必要があります。
  • 個別の事情: 建物の構造や、土地の利用状況など、個々の事情によって、この条文の適用が異なる場合があります。

まとめ

この条文は、高低差のある建物における境界線上の障壁の所有関係について、より具体的な規定を設けています。
建物の構造上の特殊性や、防火対策の必要性などを考慮し、民法第230条の原則を補完する役割を果たしています。

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