民法第二百二条 (本権の訴えとの関係)

民法第二百二条 (本権の訴えとの関係)

第二百二条 占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。

民法第二百二条の解説

概要

民法第二百二条は、占有の訴え本権の訴えの関係について定めています。
簡単に言うと、占有に関する訴訟と、その物に対する所有権などの「本来的権利」に関する訴訟は、互いに影響を及ぼさないということです。

具体的な意味

  • 占有の訴え:占有に関する訴えの総称で、占有保全の訴え、占有回収の訴えなどを含みます。
  • 本権の訴え:物に対する所有権や使用貸借権など、その物に対する「本来的権利」に基づいて起こす訴えです。

条文の意味を具体的に見ていきましょう。

  1. 占有の訴えは本権の訴えを妨げない

    • 占有に関する訴えを起こしたからといって、その物に対する所有権などの「本権」に関する訴えを起こせなくなるわけではありません。
    • 例えば、ある土地を占有している人が、その土地の所有権を主張する相手に対して占有保全の訴えを起こした場合でも、その後、その土地の所有権を主張する訴え(本権の訴え)を起こすことができます。
  2. 本権の訴えは占有の訴えを妨げない

    • 逆もまた然りです。本権に関する訴えを起こしたからといって、占有に関する訴えを起こせなくなるわけではありません。
    • 例えば、ある土地の所有権を主張する人が、その土地を占有している相手に対して所有権に基づく返還請求訴え(本権の訴え)を起こした場合でも、その後、占有されていることを理由に占有回収の訴えを起こすことができます。

なぜこのような規定があるのか

  • 訴訟の独立性:占有に関する問題と、その物に対する権利に関する問題は、別個に扱われるべきという考え方です。
  • 権利保護の多様性:様々な角度から権利を保護するために、それぞれの訴えを独立して行うことができるようにしています。

2 占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。

民法第二百二条第二項の解説

概要

民法第二百二条第二項は、占有の訴えにおいては、本権に関する理由に基づいた裁判を行うことができないと定めています。

具体的な意味

  • 占有の訴え:占有に関する紛争を解決するための訴えです。例えば、占有を妨害された場合にその妨害を止めさせたり、占有を奪われた場合にその物を返してもらうために起こす訴えなどが挙げられます。
  • 本権:物に対する所有権や使用貸借権など、その物に対する「本来的権利」のことを指します。
  • 本権に関する理由:「私はこの土地の所有者である」といったように、自分の権利に基づいた主張のことです。

この条文の意味を具体的に見ていきましょう。

占有の訴えでは、現在の占有状態が問題となります。
つまり、「誰が今、この物を占有しているのか」という事実関係が争点となるのです。
そのため、「私はこの物の所有者である」といったように、自分の権利に基づいた主張(本権に関する理由)は、占有の訴えでは原則として考慮されません。

なぜ本権に関する理由に基づいた裁判ができないのか?

  • 訴訟の効率化:占有の訴えと本権に関する訴えは、別個に扱うことで、訴訟を効率的に進めることができます。
  • 事実関係の明確化:占有の訴えでは、現在の占有状態という事実関係に焦点を当てることで、裁判をより明確に行うことができます。

  • 例1:AさんがBさんの土地を占有しています。Aさんは、Bさんから土地を明け渡すよう求められた場合、占有保全の訴えを起こすことができます。このとき、Aさんが「私はこの土地の所有権がある」と主張しても、占有保全の訴えにおいては、その主張は原則として考慮されません。
  • 例2:CさんがDさんの車を借りています(使用貸借契約)。Dさんが車を返してほしいとCさんに要求した場合、Cさんは、占有保全の訴えを起こすことができます。このとき、Cさんが「私はこの車をまだ使用できる権利がある」と主張しても、占有保全の訴えにおいては、その主張は原則として考慮されません。

注意点

  • 本権に基づく反訴は可能:占有の訴えに対して、被告は本権に基づく反訴を提起することができます。例えば、占有の訴えの被告は、「原告は私の土地を不正に占有している」と主張し、その土地の所有権に基づいた反訴を提起することができます。
  • 例外:特別な事情がある場合など、本権に関する理由が考慮されるケースもあります。

まとめ

民法第二百二条第二項は、占有の訴えにおいては、現在の占有状態が問題となることを明確にしています。
これは、占有に関する紛争を迅速かつ効率的に解決するための重要な規定です。

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