民法第二百条 (占有回収の訴え)

民法第二百条 (占有回収の訴え)

概要

民法第二百条は、占有がすでに奪われた場合に、占有回収の訴えを提起し、その返還損害賠償を請求できることを定めています。

具体的な意味

  • 占有:ある土地や建物などを実際に使っていて、その場所を自分のものとして支配している状態を指します。
  • 奪われた:占有者がその占有を維持できなくなり、他の者に占有されてしまった状態を指します。例えば、家から追い出されたり、物が盗まれたりした場合などが考えられます。
  • 占有回収の訴え:裁判所に、奪われた物を返してもらうことと、そのことによって生じた損害に対する賠償を求める訴えです。

占有回収の訴えの意義

占有回収の訴えは、一度奪われた占有を回復し、損害を賠償してもらうために非常に重要な役割を果たします。例えば、盗まれた物を返してもらう、あるいは、家から追い出された場合に再び住めるようにするといったケースで活用されます。

占有回収の訴えと他の訴えとの違い

  • 占有保持の訴え:占有が妨害されている最中に、その妨害を止めさせ、元の状態に戻すことを求める訴えです。
  • 占有保全の訴え:将来、占有が妨害されるおそれがある場合に、その妨害を未然に防ぐための措置を求める訴えです。
  • 占有回収の訴え:占有がすでに奪われた場合に、奪われた物を返してもらうことを求める訴えです。

2 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。

民法第二百条第二項の解説

概要

民法第二百条第二項は、占有回収の訴え相手方について、いくつかの制限を設けています。
具体的には、占有を侵奪した者の特定承継人に対しては、原則として占有回収の訴えを提起できないと定めています。
ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていた場合は、この制限が適用されません。

具体的な意味

  • 占有回収の訴え:自分の占有を奪われた者が、その物を返してもらうために起こす訴えです。
  • 侵奪した者:不正に占有を奪った者を指します。
  • 特定承継人:相続や贈与などによって、侵奪した者の権利や義務を全て引き継いだ者を指します。
  • 侵奪の事実を知っていた:特定承継人が、その者が侵奪行為を行ったことを知っていた場合を指します。

なぜ特定承継人に訴えられないのか?

  • 無過失の原則:特定承継人が侵奪の事実を知らなかった場合、その者が侵奪行為に関与したわけではないため、責任を負わせることは不公平と考えるからです。
  • 取引の安全:特定承継人が善意で財産を取得した場合、その者に責任を負わせると、財産取引が安全に行えなくなってしまうという懸念があります。

しかし、侵奪の事実を知っていた場合は?

  • 悪意の取得:特定承継人が侵奪の事実を知っていた場合は、不正な行為に関与したとみなされ、責任を負うべきと考えられるからです。

具体的なケース

例えば、AさんがBさんの土地を不正に占有し、その後Cさんにその土地を贈与した場合、Bさんは原則としてCさんに対して占有回収の訴えを提起できません。しかし、CさんがAさんの不正な占有を最初から知っていた場合は、BさんはCさんに対して訴えを提起することができます。

注意点

  • 善意・悪意の判断:特定承継人が侵奪の事実を知っていたかどうかは、個々のケースによって判断が異なります。
  • その他の要件:占有回収の訴えには、他にも様々な要件があります。

さらに詳しく知りたい方へ

  • 民法の他の条文:占有に関する他の条文を詳しく調べることで、より深く理解することができます。
  • 弁護士への相談:具体的なケースについては、弁護士に相談することで、より適切なアドバイスを受けることができます。

まとめ

民法第二百条第二項は、占有回収の訴えの範囲を限定する重要な規定です。
もし、あなたが占有を奪われた場合、この条項の要件を満たしているかどうか、弁護士に相談することをおすすめします。

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