民法第百九十六条 (占有者による費用の償還請求)

民法第百九十六条 (占有者による費用の償還請求)

第百九十六条 占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。

民法第196条解説:占有者の費用償還請求権

条文の意味

民法第196条は、占有者占有物返還する場合、その占有物を守るために使った費用(必要費)を、真の所有者回復者)から請求できるという権利を定めています。

例えば、あなたが誤って他人の家を占有していたとします。その間、家の修繕費や光熱費を支払った場合、その費用を真の所有者に請求できるということです。

必要費とは

必要費とは、占有物の保存のために支出された費用を指します。具体的には、以下のものが挙げられます。

  • 修繕費: 屋根の修理、壁の補修など、占有物をそのままの状態に保つために必要な費用。
  • 光熱費: 電気代、ガス代、水道代など、占有物を利用するために必要な費用。
  • 税金: 固定資産税など、占有物にかかる税金。

償還請求の要件

  • 占有物の返還: 占有者が占有物を返還する場合に限られます。
  • 必要費: 支出した費用が、占有物の保存のために必要であったこと。

例外:果実を取得した場合

占有者が占有物から果実(家賃収入など)を得ていた場合は、通常の必要費は占有者の負担となります。

条文の目的

この条文の目的は、公平な関係を維持することです。占有者は、善意であれ悪意であれ、占有物に対して一定の管理義務を負います。
そのため、その義務を果たすために支出された費用については、真の所有者に負担させるのは不公平であると考えられます。

2 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

民法第196条第2項解説:占有者の有益費償還請求権

条文の意味

民法第196条第2項は、占有者が占有物の改良のために費やした費用(有益費)について、一定の条件下で、その費用または改良によって生じた増価額を、真の所有者から請求できるという権利を定めています。

例えば、あなたが誤って他人の家を占有していて、その家の庭に花を植えたり、新しい屋根を葺いたりした場合、その費用を真の所有者に請求できる可能性がある、ということです。

有益費とは

有益費とは、占有物の価値増加させるために支出された費用を指します。具体的には、以下のものが挙げられます。

  • 修繕費: 老朽化した建物を改修したり、新しい設備を設置したりする費用。
  • 装飾費: 庭に花を植えたり、壁に絵画を飾ったりする費用。

償還請求の要件

  • 占有物の改良: 支出した費用が、占有物の価値を増加させるためのものだったこと。
  • 価格の増加が現存: 改良によって占有物の価格が実際に上昇していること。
  • 回復者の選択: 真の所有者が、支出された金額か増価額のいずれかを選択できること。

悪意の占有者に対する例外

  • 償還期限の許容: 裁判所は、悪意の占有者に対しては、回復者の償還請求に対して、相当の期限を付与することができます。

条文の目的

この条文の目的は、公平な関係を維持することです。占有者は、占有物に対して一定の管理義務を負う一方で、その占有物に貢献した部分については、その対価を受ける権利があると認められています。

まとめ

民法第196条第2項は、占有者が占有物を改良した場合に、その費用を請求できるという権利を定めています。
ただし、この権利は、いくつかの条件が満たされなければなりません。
また、悪意の占有者に対しては、裁判所の判断によって償還請求が制限される場合があります。

続きを見る