民法第百九十一条 (占有者による損害賠償)

民法第百九十一条 (占有者による損害賠償)

第百九十一条 占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。

民法第191条解説:占有物滅失・損傷時の賠償責任

条文の意味

民法第191条は、占有者がその占有物滅失させたり、損傷させた場合、その回復者に対して、悪意の占有者と善意の占有者で賠償責任が異なることを定めています。

  • 悪意の占有者: 占有物の滅失・損傷が占有者の責めに帰すべき事由による場合、全額の賠償責任を負います。
  • 善意の占有者: 占有物の滅失・損傷によって現実に利益を受けている範囲で賠償責任を負います。ただし、所有の意思がない占有者は、善意であっても全額の賠償責任を負います。

条文の目的

この条文の目的は、権利の保護公平な関係の維持にあります。

  • 権利の保護: 真の所有者(回復者)の権利を保護するため、占有者が占有物を滅失させたり、損傷させた場合、その責任を負わせます。
  • 公平な関係: 占有者の悪意の程度によって、賠償責任の程度を異にすることで、公平な関係を維持します。

条文の解釈と注意点

  • 占有者の責めに帰すべき事由: 占有者の故意や過失、あるいは占有者の管理義務違反などが考えられます。
  • 回復者: 真の所有者だけでなく、その他の権利に基づいて回復を請求できる者も含まれます。
  • 利益を受けている限度: 占有者が占有物から得た利益の範囲内で賠償責任を負います。

具体的な事例

  • 悪意の占有者: Aさんが、Bさんの車を盗んで運転中に事故を起こし、車を廃車にした場合、AさんはBさんに対して車の全額を賠償する義務を負います。
  • 善意の占有者: Cさんが、Dさんの自転車を自分のものと思い込んで乗り、修理不能なほど壊してしまった場合、CさんはDさんに対して、自転車の修理費用や、Cさんが自転車を利用することで得た利益相当額を賠償する義務を負います。
  • 所有の意思のない占有者: Eさんが、Fさんの犬を一時的に預かっている間に、犬を亡くしてしまった場合、EさんはFさんに対して犬の価額を全額賠償する義務を負います。

まとめ

民法第191条は、占有者が占有物を滅失させたり、損傷させた場合の賠償責任について、占有者の悪意の程度によって責任の程度が異なることを規定しています。
この条文は、占有に関する紛争の解決において、占有者の責任を明確にする上で、重要な役割を果たしています


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