民法第百四十九条 (仮差押え等による時効の完成猶予)

民法第百四十九条 (仮差押え等による時効の完成猶予)

第百四十九条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了した時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

民法第149条の解説:時効の完成猶予

第149条の趣旨

民法第149条は、債務者の所在が不明である場合債務者が死亡した場合など、債権者が債務者に請求することが困難な状況にある場合に、時効の完成を猶予する規定です。これは、債権者の権利保護を目的としており、債務者の所在が判明したり、相続人が確定するまでの間、債権者が債務を放棄することを防ぐためのものです。

時効が完成しない期間

この条文では、上記のような事由がある場合、その事由が終了したときから6ヶ月の間は、時効は完成しないと定めています。つまり、債務者の所在が判明したり、相続人が確定したりしたときから6ヶ月の間は、債権者はいつでも債務の支払いを請求することができます。

具体的なケース

  • 債務者が転居して所在不明になった場合: 債務者の新たな住所が判明するまでは、時効は進行しません。
  • 債務者が死亡し、相続人が特定できない場合: 相続人が確定するまでは、時効は進行しません。

猶予期間の意義

  • 債権者の権利保護: 債務者の所在が不明な間に債権が消滅してしまうことを防ぎ、債権者の権利を保護します。
  • 公平性の確保: 債務者の都合によって、債権者が不当に権利を失うことを防ぎ、債権者と債務者の間の関係を公平にします。

一 仮差押え

民法第149条第1項:仮差押えと時効の関係について

民法第149条第1項の解説

民法第149条第1項は、仮差押えが、時効の完成を猶予する事由の一つであると定めています。

時効の完成猶予とは、通常であれば時効が完成して権利が消滅してしまうところを、一定の事由がある場合には、その権利が消滅する時期を遅らせる(猶予する)ことを意味します。

仮差押えは、債権者が債務者の財産を仮に差し押さえることで、その財産が債務者によって処分されるのを防ぎ、将来の債権回収を確実にするための制度です。この仮差押えが行われている間は、債権の時効が進行しない、つまり時効が完成しないということです。

なぜ仮差押えが時効の完成を猶予するのか?

  • 債権者の権利保護: 債務者が財産を隠匿したり、第三者に譲渡したりしてしまうことを防ぎ、債権者が将来、債務者からお金を回収できる可能性を高めるためです。
  • 手続きの円滑化: 債権者は、仮差押えを行うことで、安心して債務回収の手続きを進めることができます。

仮差押えと時効の関係を具体的に見てみましょう

  • 仮差押えが開始された場合: 仮差押えが開始された時点から、時効の進行が停止します。
  • 仮差押えが終了した場合: 仮差押えが終了したときから6ヶ月間は、時効は完成しません。

二 仮処分

民法第149条第2項:仮処分と時効の関係

仮処分と時効の完成猶予

民法第149条第2項は、仮処分も、仮差押えと同様に、時効の完成を猶予する事由の一つであると定めています。

仮処分とは?

仮処分とは、裁判所が、将来発生すると思われる権利の侵害を未然に防ぐために、その権利の侵害のおそれがある行為を禁止したり、ある状態を維持したりする決定を下す制度です。仮差押えが財産の保全を目的とするのに対し、仮処分は権利そのものを保全することを目的としています。

仮処分と時効の関係

  • 仮処分の効果: 仮処分が決定されると、その決定の内容に従い、債務者は一定の行為を禁止されたり、ある状態を維持しなければならなくなります。
  • 時効の完成猶予: 仮処分の決定期間中は、債権の時効は進行しません。つまり、仮処分が終了するまで、債権者はいつでも債務の支払いを請求することができます。

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