民法第百四十五条 (時効の援用)
民法第百四十五条 (時効の援用)
第百四十五条 時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
民法第145条は、時効の効果を発生させるためには、当事者がその援用を行わなければならないと定めています。
より具体的に言うと、時効が成立したとしても、その権利を失った当事者や、権利を得ようとする当事者などが、裁判などでその時効を主張(援用)しなければ、裁判所はその時効を理由に判決を出すことはできない、ということです。
各用語の解説
- 時効: 一定期間、権利を行使しなかったり、義務を果たさなかったりした場合に、その権利が消滅したり、新たな権利を取得したりする制度です。
- 当事者: 契約や法律行為によって権利義務関係を結んでいる者です。消滅時効の場合は、債務者や保証人などが、取得時効の場合は、占有者などが該当します。
- 援用: 時効の効果を主張することです。裁判で主張したり、相手方に通知したりすることで、援用することができます。
条文の意図
- 時効の主動性: 時効は、法律によって自動的に発生するものではなく、当事者の意思表示によって初めて効果が生じます。
- 裁判所の役割: 裁判所は、当事者の主張に基づいて判断を行う機関であり、当事者が時効を主張しない限り、裁判所で時効を理由に判断することはできません。
例
- 債権の時効: AさんがBさんからお金を借りており、10年間返済していなかったとします。BさんがAさんを訴えて返済を求める場合、Aさんは「時効が成立している」と主張(援用)することで、Bさんの請求を棄却させることができます。
- 所有権の取得時効: CさんがDさんの土地を20年間占有していたとします。Cさんがその土地の所有権を主張する場合、Dに対して時効の援用を行うことで、自分の所有権を主張することができます。
注意点
- 時効の援用は任意: 時効は援用しなくてもよいという権利があります。
- 援用の時期: 援用は、裁判のどの段階で行っても構いませんが、なるべく早い段階で行う方が良いでしょう。
まとめ
民法第145条は、時効の効果を発生させるためには、当事者の意思表示が必要であることを定めています。
時効は、権利関係に大きな影響を与えるため、この条文の意味を理解しておくことは重要です。