民法第百二十四条 (追認の要件)

民法第百二十四条 (追認の要件)

第百二十四条 取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。

民法第124条は、取り消すことができる法律行為を有効にする「追認」を行う際の条件について定めています。

簡単に言うと、追認は、取り消しの原因がなくなった後かつ、自分が取り消せる権利を持っていることを知った後に行わなければ、有効な追認とは認められないということです。

なぜこのようなルールがあるのか?

このルールがあるのは、不当な追認を防ぎ、法律関係の安定を図るためです。

  • 取り消しの原因の消滅: 例えば、詐欺によって契約を結ばされた場合、詐欺の事実を知って契約を取り消すことができます。しかし、詐欺の事実が明らかになり、相手方が謝罪してきたなどの状況で、再びその契約を有効にしたいと考える場合があるかもしれません。この条文は、このような場合、詐欺の事実が完全に解消された上で、改めて契約を有効にすることを求めています。
  • 取消権の認識: 取り消せる権利があることを知らないまま追認してしまうと、自分の権利を放棄してしまう可能性があります。この条文は、自分がどのような権利を持っているのかを理解した上で、追認を行うことを求めています。

具体的に解説

  • 取消しの原因: 錯誤、詐欺、強迫、未成年者の行為など、法律行為を取り消すことができる原因となる事柄。
  • 取消権: 法律行為を取り消すことができる権利。
  • 追認: 取り消すことができる法律行為を有効にすること。

  • 未成年者が購入したゲーム機: 未成年者が親の同意なしに高額なゲーム機を購入した場合、親は取り消すことができます。しかし、未成年者が成人し、自分で働いてそのゲーム機を支払うことができるようになった場合、親は「もう取り消す必要はない」と判断し、追認することができます。この場合、未成年者が成人したという状況が、取り消しの原因(未成年であること)の消滅を意味します。

2 次に掲げる場合には、前項の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない。

民法第124条第2項は、追認の要件に関する例外規定です。

一般的に、法律行為を取り消すことができる場合、その行為を追認するためには、取り消しの原因となった状況が完全に解消されていることが求められます。しかし、この第2項では、いくつかの例外的なケースを定めており、これらのケースについては、取り消しの原因が解消されていない状況下でも追認が認められる場合があることを示しています。

例外ケースの詳細

具体的にどのような場合に、取り消しの原因が解消されていない状況下でも追認が認められるのか、各ケースについて詳しく見ていきましょう。

(1)制限行為能力者が法定代理人の同意を得て追認する場合

  • 制限行為能力者: 未成年者、成年被後見人、被保佐人など、法律行為の能力が制限されている人。
  • 法定代理人: 親、後見人、保佐人など、制限行為能力者の代わりに法律行為を行うことができる人。

このケースでは、制限行為能力者が法定代理人の同意を得て追認を行う場合、取り消しの原因が解消されていない状況下であっても、追認が有効と認められます。
これは、法定代理人が制限行為能力者の利益を保護する立場にあるため、法定代理人の同意があれば、制限行為能力者が不利な状況に陥ることを防ぐことができるという考えに基づいています。

(2)その他の法令で特別の規定がある場合

  • 法令: 民法以外の法律、例えば商法など。

他の法律に、取り消しの原因が解消されていない状況下でも追認が有効と定める特別な規定がある場合は、その規定に従います。

なぜこのような例外があるのか

これらの例外規定があるのは、実務上の必要性を考慮したためです。

  • 制限行為能力者の保護: 法定代理人の同意があれば、制限行為能力者が不利な状況に陥ることを防ぐことができる。
  • 法令の整合性: 他の法律の規定との整合性を図る必要がある。

一 法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をするとき。

民法第124条第2項第1号は、追認の要件に関する例外規定の一つです。

一般的に、法律行為を取り消すことができる場合、その行為を追認するためには、取り消しの原因となった状況が完全に解消されていることが求められます。
しかし、この条項では、法定代理人や保佐人、補助人が追認する場合は、取り消しの原因が解消されていない状況下であっても、追認が有効と認められることを示しています。

なぜこのような例外があるのか?

この例外がある理由は、制限行為能力者の保護にあります。

  • 制限行為能力者: 未成年者、成年被後見人、被保佐人など、法律行為の能力が制限されている人。
  • 法定代理人: 親、後見人、保佐人など、制限行為能力者の代わりに法律行為を行うことができる人。
  • 保佐人・補助人: 被保佐人・被補助人の法律行為を補助する人。

制限行為能力者は、判断能力が十分でないため、不利な契約を結んでしまう可能性があります。
そのため、法定代理人や保佐人、補助人は、制限行為能力者の利益を保護する立場にあり、これらの者が追認を行う場合には、たとえ取り消しの原因が完全に解消されていない状況であっても、追認が有効と認められることで、制限行為能力者の権利が保護されるというわけです。

具体例

  • 未成年者が購入したゲーム機: 未成年者が親の同意なしに高額なゲーム機を購入した場合、原則として取り消すことができます。しかし、親(法定代理人)が、その契約内容を検討し、未成年者の利益に反するものでないと判断した場合、親がその契約を追認することができます。この場合、未成年者が未成年のままであっても(取り消しの原因が解消されていない状態でも)、親の追認によって契約は有効になります。

二 制限行為能力者(成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て追認をするとき。

民法第124条第2項第2号は、追認の要件に関する例外規定の一つです。

一般的に、法律行為を取り消すことができる場合、その行為を追認するためには、取り消しの原因となった状況が完全に解消されていることが求められます。しかし、この条項では、制限行為能力者(成年被後見人を除く)が、法定代理人、保佐人、または補助人の同意を得て追認する場合は、取り消しの原因が解消されていない状況下であっても、追認が有効と認められることを示しています。

なぜこのような例外があるのか?

この例外がある理由は、制限行為能力者の保護にあります。

  • 制限行為能力者: 未成年者、成年被後見人、被保佐人など、法律行為の能力が制限されている人。
  • 法定代理人: 親、後見人、保佐人など、制限行為能力者の代わりに法律行為を行うことができる人。
  • 保佐人・補助人: 被保佐人・被補助人の法律行為を補助する人。

制限行為能力者は、判断能力が十分でないため、不利な契約を結んでしまう可能性があります。しかし、法定代理人などの同意を得て、本人がその行為を有効にしたいと意思表示した場合には、本人の意思を尊重し、その行為を有効とすることで、制限行為能力者の自主性を尊重するという考えに基づいています。

具体例

  • 未成年者が購入したゲーム機: 未成年者が親の同意なしに高額なゲーム機を購入した場合、原則として取り消すことができます。しかし、未成年者がそのゲーム機を気に入っており、自分で働いてそのゲーム機を支払うことができるようになった場合、親の同意を得て、その契約を追認することができます。この場合、未成年者が未成年のままであっても(取り消しの原因が解消されていない状態でも)、親の同意を得て本人が追認すれば、契約は有効になります。

まとめ

民法第124条第2項第2号は、制限行為能力者の保護という観点から、制限行為能力者が法定代理人などの同意を得て追認する場合には、取り消しの原因が解消されていない状況下であっても、追認が有効と認められるという例外規定です。
これは、制限行為能力者の自主性を尊重し、本人の意思を尊重するという考えに基づいています。

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