民法第百十一条 代理権は、次に掲げる事由によって消滅する

民法第百十一条 代理権は、次に掲げる事由によって消滅する

条文解説

第百十一条 (代理権の消滅事由)

この条文は、代理権という非常に重要な権利が、どのような場合にその効力を失うのかを具体的に示しています。

代理権が消滅する主な事由

  • 本人の死亡:代理人を委任した本人が亡くなれば、当然に代理権は消滅します。ただし、任意代理の場合には、遺言などで代理権を持続させることも可能です。
  • 代理人の死亡:代理人自身が亡くなれば、代理権は消滅します。
  • 代理人の破産:代理人が破産手続き開始の決定を受けると、代理権は消滅します。
  • 代理人の後見開始審判:代理人が後見開始の審判を受けると、代理権は消滅します。


任意代理に特有の消滅事由

  • 代理権授与の基礎となった契約関係の終了:例えば、委任契約が終了すれば、代理権も消滅します。
  • 代理権授与の終期の到来:代理権に期限が定められていた場合、その期限が到来すると消滅します。
  • 代理権授与の撤回:本人が代理権を与えたことを撤回すれば、代理権は消滅します。
  • 代理人の代理権放棄:代理人自身が代理権を放棄すれば、消滅します。

重要な注意点

  • 表見代理:代理権が消滅した後でも、第三者が代理権の存在を知らなかった場合、本人はその行為について責任を負うことがあります(第112条)。
  • 各事由の解釈:上記の事由はあくまでも一般的なものであり、具体的なケースによっては、もう少し複雑な解釈が必要となる場合があります。

民法第111条は、代理権の消滅事由を規定することで、法律関係の安定性を図ることを目的としています。
代理権に関するトラブルを避けるためには、この条文の内容をしっかりと理解しておくことが重要です。

一 本人の死亡
第百十一条一項「本人の死亡」について

代理権の消滅事由:本人の死亡

民法第111条一項の「本人の死亡」は、代理権が消滅する最も基本的な事由の一つです。

なぜ本人の死亡で代理権が消滅するのか?

  • 代理権の根拠がなくなる: 代理権は、本人が代理人に権限を与えることで成立します。本人が死亡すると、その権限を与える主体がいなくなるため、代理権の根拠が失われます。
  • 代理人の役割が終了: 代理人の役割は、本人の意思に基づいて法律行為を行うことです。本人が死亡すれば、その意思に基づいて行為を行う必要がなくなるため、代理人の役割は終了します。


例外はあるのか?

  • 遺言による継続: 遺言で代理権の継続を定めることで、本人の死亡後も代理権が存続する場合があります。
  • 法定代理人: 親権者や後見人など、法律で定められた代理人の場合は、本人の死亡後も一定の範囲で代理権が継続する場合があります。


具体的な例

  • 不動産売買: AさんがBさんに不動産の売買を委任し、BさんがAさんの代理人として売買契約を結ぼうとしていたところ、Aさんが亡くなりました。この場合、Bさんの代理権は消滅し、BさんはAさんの相続人の同意を得ずに売買契約を結ぶことはできません。
  • 会社代表: CさんがD会社の代表取締役を委任し、CさんがD会社を代表して契約を結んでいました。Cさんが亡くなった場合、Cさんの代理権は消滅し、D会社は新しい代表取締役を選任する必要があります。
第百十一条二項「代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと」について

代理権の消滅事由:代理人に関する事由

民法第111条二項は、代理人自身に何らかの事由が生じた場合、代理権が消滅することを定めています。

なぜ代理人に関する事由で代理権が消滅するのか?

  • 代理人の能力喪失: 代理人は、本人の意思に基づいて法律行為を行うために、一定の能力を備えている必要があります。死亡や破産、後見開始は、その能力が喪失した状態であると考えられるため、代理権が消滅します。
  • 代理人の利益相反: 破産や後見開始の場合、代理人が本人の利益よりも自身の利益を優先してしまう可能性があります。このような状況を避けるために、代理権が消滅します。

具体的な事由と意味

  • 代理人の死亡: 代理人が死亡すると、当然に代理権は消滅します。これは、本人の死亡の場合と同様、代理権の根拠が失われるためです。
  • 代理人の破産: 代理人が破産手続き開始の決定を受けると、財産管理能力が著しく低下しているとみなされ、代理権を継続することが困難になります。
  • 代理人の後見開始: 代理人が後見開始の審判を受けると、意思決定能力が不十分と判断され、代理権を継続することが適切でないと考えられます。


各事由のポイント

  • 破産と後見開始: 破産と後見開始は、代理人の能力に関する問題だけでなく、債権者保護や本人の保護という観点からも、代理権を消滅させる必要があるとされています。
  • その他の事由: 代理人の病気や入院など、一時的に代理人の能力が低下する場合でも、代理権が消滅するとは限りません。


具体的な例

  • 会社契約: AさんがB会社と契約を結ぶ際、Cさんを代理人として選任しました。その後、Cさんが病気で死亡した場合、Cさんの代理権は消滅し、Aさんは新しい代理人を選任する必要があります。
  • 不動産売買: DさんがEさんに不動産の売買を委任し、EさんがDさんの代理人として売買交渉を進めていました。しかし、Eさんが破産手続開始の決定を受けた場合、Eさんの代理権は消滅し、Dさんは別の代理人を探す必要があります。


まとめ

代理人の死亡、破産、後見開始は、代理権が消滅する代表的な事由です
これらの事由が発生した場合、代理権が消滅し、新たな代理人を選任する必要があるか、あるいは別の方法で法律行為を行う必要があります。

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