民法第百十条 (権限外の行為の表見代理)
民法第百十条 (権限外の行為の表見代理)
第百十条 前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
民法第110条の解説:権限外の行為の表見代理
条文の意味
民法第110条は、代理人がその権限を超えた行為(権限外の行為)をした場合に、第三者が代理人にその権限があると信じるに足る正当な理由があるとき、本人がその行為について責任を負うという表見代理の規定です。
簡単に言うと、代理人が本来できる範囲を超えて何かをしたとしても、相手方が「その人はそれをする権利がある」と信じるに足る理由があれば、本人がその行為について責任を負うということです。
なぜこの条文があるのか
- 取引の安全のため: 第三者は、相手が本当に代理権を持っているかどうかを細かく確認することが難しい場合もあります。この条文は、そのような第三者を保護し、取引の安全性を高めることを目的としています。
- 社会生活の円滑化: このようなルールがあることで、人々は取引を安心して行うことができ、社会生活が円滑に機能します。
条文のポイント
- 権限外の行為: 代理人が委任された範囲を超えて行った行為。
- 第三者の信ずるべき正当な理由: 第三者が、客観的に見て、代理人がその行為をする権限を持っていると信じるに足る理由があること。
- 本人の責任: 本人は、代理人の権限外の行為についても、第三者が正当な理由で代理権があると信じていた範囲内で責任を負う。
具体的なケース
- 会社Aの社員Bが、取引先Cに対して、「私は会社Aの営業部長です」と名乗り、契約を結んだ場合:
- Bが会社Aの社員であり、営業に関する業務に関わっていた場合、取引先CがBを営業部長と信じるには、ある程度の理由があると考えられる場合、会社AはBの行為について責任を負う可能性があります。
まとめ
民法第110条は、表見代理の範囲を、代理権の範囲外の行為にも拡大する可能性があることを示しています。ただし、第三者が正当な理由で代理権があると信じる場合に限って責任が問われるため、表示をした者にとっては、代理権の範囲を明確にすることが重要です。