民法第三十七条 (外国法人の登記)

民法第三十七条 (外国法人の登記)

第三十七条 外国法人(第三十五条第一項ただし書に規定する外国法人に限る。以下この条において同じ。)が日本に事務所を設けたときは、三週間以内に、その事務所の所在地において、次に掲げる事項を登記しなければならない。

民法第37条の解説

条文の意味

民法第37条は、日本国内に事務所を設けた外国法人が、一定の事項を登記する義務を定めています。

簡単に言うと、外国企業が日本に進出して事務所を構える場合、そのことを法務局に届け出る必要があるということです。

各用語の解説

  • 外国法人: 自国の法令に基づいて設立された法人で、日本国内に本店又は主たる事務所を有しないものを指します。
  • 事務所: 法人がその業務を行う場所を指します。
  • 登記: 法人に関する重要な事項を、公的な登記簿に記録することです。

条文の目的

この条文の目的は、外国法人の活動状況を透明化し、債権者の保護を図ることです。
登記を行うことで、外国法人の事務所の所在地や連絡先などが公示され、取引相手は、その外国法人と連絡を取ったり、訴訟を起こしたりすることが容易になります。

登記すべき事項

第37条では、登記すべき事項として以下が挙げられています。

  • 事務所の所在地: 法人が日本国内に設けた事務所の住所です。
  • 代表者の氏名及び住所: 日本における代表者の氏名と住所です。
  • 本店又は主たる事務所の所在地: 外国法人の本国の所在地です。
  • 商号: 外国法人の名称です。
  • 目的: 外国法人の事業目的です。

条文のポイント

  • 登記義務: 日本に事務所を設けた外国法人は、登記を行う義務があります。
  • 登記の時期: 事務所を設けてから3週間以内に登記を行う必要があります。
  • 登記の場所: 事務所の所在地を管轄する法務局で登記を行います。

民法第37条は、日本に事務所を設けた外国法人の登記義務を定めています。
この登記制度は、外国法人の活動状況を透明化し、取引の安全性を高める上で重要な役割を果たしています。

一 外国法人の設立の準拠法

外国法人の設立の準拠法について

外国法人の設立の準拠法とは、その外国法人がどのような法体系に基づいて設立され、その権利義務関係がどの国の法律によって規律されるのかを定める法のことです。

準拠法の重要性

  • 法人の性格把握: 準拠法によって、その法人が持つ権利義務の性質や範囲が決定されます。例えば、株式会社なのか、有限会社なのか、あるいは非営利法人なのかといった、法人の基本的な性格が明らかになります。
  • 紛争解決の基準: 法人に関する紛争が生じた場合、準拠法に基づいて解決されます。
  • 取引の安全性: 相手方との取引を行う際に、準拠法を事前に確認することで、取引リスクを軽減することができます。

準拠法の決定方法

準拠法の決定方法は、以下の要素によって異なります。

  • 法人の設立地: 法人が設立された国の法が準拠法となるのが一般的です。
  • 法人の活動拠点: 法人の主たる事業所が所在する国の法が準拠法となる場合もあります。
  • 当事者の合意: 契約書などで、あらかじめ準拠法を定めることができます。
  • その他の法の規定: 準拠法に関する国際条約や各国の国内法の規定が適用される場合があります。

日本における外国法人の準拠法

日本においては、外国法人が日本国内で活動する場合、その設立の準拠法は、原則として外国法人の本国法となります。
ただし、日本国内での活動に関する一部の事項については、日本の法が適用される場合があります。

準拠法に関する注意点

  • 準拠法が複数存在する場合: 法人に関する紛争において、複数の法が適用される可能性があります。
  • 準拠法の解釈: 準拠法の解釈は、専門的な知識が必要となります。
  • 国際私法: 準拠法の選択や適用に関する問題は、国際私法の領域であり、複雑な問題を含みます。

外国法人の設立の準拠法は、その法人の法的性格や、紛争発生時の解決基準を決定する上で非常に重要な要素です。
準拠法の選択は、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

二 目的

民法第35条第2項の目的について

民法第35条第2項は、日本国内で活動する外国法人に、日本法人が享受する権利をできるだけ平等に与えることを目的としています。

より詳細な目的

  • 外国法人の活動促進: 日本における外国企業の進出を促進し、経済活動を活性化させることを目的としています。
  • 取引の円滑化: 日本法人と外国法人の間の取引を円滑に進めるために、両者に平等な権利を与えることで、取引の安定性を高めることを目的としています。
  • 法秩序の維持: 外国法人に日本法人が享受する権利を与える一方で、外国人が享有できない権利や、法律・条約で特別に定められた権利については制限をかけることで、日本の法秩序を維持することを目的としています。

具体的にどのような効果があるのか

  • 外国法人が日本国内で自由に事業活動を行うことができる: 不動産を取得したり、契約を結んだり、訴訟を起こしたりすることが可能になります。
  • 日本法人と平等な競争条件でビジネスを行うことができる: 日本法人が享受する税制上の優遇措置や、政府の入札への参加資格なども、一定の条件下で外国法人にも与えられる可能性があります。
  • 日本経済への貢献: 外国法人の投資や技術導入が促進され、日本経済の活性化に貢献することが期待されます。

民法第35条第2項は、外国法人に日本法人が享受する権利をできるだけ平等に与えるというシンプルな目的を持っています。
しかし、その背景には、外国企業の誘致経済活動の活性化法秩序の維持といった、より広範な政策的な目的が隠されています。

三 名称

民法第35条第2項における「名称」に関する考察

問題設定:なぜ「名称」について明記されていないのか?

民法第35条第2項は、外国法人が日本において成立する同種の法人と同一の私権を有すると定めていますが、「名称」については明確な規定がありません。これは、一見すると不思議なように思えます。

考察

  1. 商号法との関係:

    • 商号の自由: 日本では、商号の自由が原則として認められています。商号法は、商号の類似性や不正競争行為などを規制していますが、原則として自由に商号を選ぶことができます。
    • 外国法人の商号: 外国法人も、日本国内で事業を行うにあたり、商号を使用する必要があります。この場合、日本における商号法の規定が適用されます。
    • 名称の同一性: 外国法人が、本国の商号と同一の商号を日本でも使用できるかどうかは、商号法の規定に基づいて判断されます。
  2. 私権の範囲:

    • 名称は私権の一部: 商号は、法人の財産的価値を有する重要な要素であり、私権の一部と考えることができます。
    • 同種の法人と同一の私権: 第2項は、外国法人が日本において成立する同種の法人と同一の私権を有すると定めています。この「私権」には、商号に関する権利も含まれると解釈することができます。
  3. 立法の意図:

    • 柔軟な対応: 法律で具体的な名称に関する規定を設けずに、商号法に委ねることで、経済状況の変化や国際的な動向に対応できる柔軟な制度となっています。
    • 商号の保護: 商号法は、商号の類似性や不正競争行為などを規制することで、商号の保護を図っています。

民法第35条第2項において「名称」が明記されていないのは、以下の理由が考えられます。

  • 商号法との関係: 商号に関する事項は、商号法で詳細に規定されているため、民法では重複して規定する必要がない。
  • 私権の範囲: 名称は私権の一部であり、第2項の「同一の私権」に含まれると解釈できる。
  • 立法の意図: 法律の柔軟性と商号の保護を両立させるため。

結論として、外国法人が日本において使用する名称については、商号法の規定が適用されます。

その他の注意点

  • 商号の類似性: 日本国内で既に使用されている商号と類似した商号を使用することは、不正競争行為となる可能性があります。
  • 商標権: 商号が商標として登録されている場合は、商標権の侵害となる可能性があります。
  • 外国法人の名称変更: 外国法人が日本における商号を変更する場合の手続きは、商法の規定に従う必要があります。

四 事務所の所在場所

民法第37条における「事務所の所在場所」について

民法第37条における「事務所の所在場所」の意義

民法第37条は、外国法人が日本に事務所を設けた場合、その事務所の所在地を登記することを義務付けています。この「事務所の所在場所」は、以下の点で重要な意味を持ちます。

  • 法人の連絡先: 外国法人との連絡を取る際の第一の窓口となります。
  • 訴訟における送達先: 外国法人を相手とする訴訟において、訴状などの書類を送達する場所となります。
  • 執行の対象: 外国法人の財産に対して執行を行う場合、事務所の所在地にある財産がまず執行の対象となります。
  • 登記簿上の表示: 登記簿に記載されることで、第三者に対してその法人の存在と活動拠点が公示されます。

「事務所」の概念

「事務所」の概念は、必ずしも固定的なオフィスを指すわけではありません。

  • 営業所: 商品の販売やサービスの提供を行う場所
  • 支社: 本社から権限委任を受けて業務を行う場所
  • 工場: 製品を製造する場所
  • その他の事業所: 法人の業務を行う場所

これらの場所はいずれも、「事務所」に該当する可能性があります。

登記上の注意点

  • 特定の場所: 登記する際は、具体的に建物の名称、号室などを記載する必要があります。
  • 変更時の登記: 事務所を移転した場合には、速やかに変更登記を行う必要があります。
  • 複数の事務所: 複数の事務所を有する場合、主たる事務所と従たる事務所を区別して登記する場合があります。

なぜ「事務所の所在場所」を登記するのか?

  • 法人の透明性確保: 外国法人の活動状況を透明化し、取引の安全性確保に資します。
  • 債権者の保護: 債権者は、登記簿を調べることで、外国法人の財産状況や連絡先を確認することができます。
  • 国による監督: 国は、登記簿を調べることで、外国法人の活動状況を把握し、必要に応じて監督を行うことができます。

民法第37条における「事務所の所在場所」は、外国法人の活動拠点であり、登記によってその存在と活動状況が公示されます。
この情報は、取引相手、債権者、そして国にとって重要な情報となります。

五 存続期間を定めたときは、その定め

民法における存続期間の定めについて

民法における存続期間の定めの概要

民法において、法人(会社など)の存続期間を定めることができるという規定はありません。一般的に、法人は、法的な手続きを経ることで、原則として無期限に存続することができます。

なぜ存続期間が定められないのか?

  • 柔軟性: 企業活動は常に変化し、不確実な要素を含みます。存続期間を定めてしまうと、企業の成長や事業環境の変化に対応することが難しくなる可能性があります。
  • 永続性の確保: 多くの企業は、長期的な視点で事業を展開することを目指しています。存続期間を定めないことで、企業が永続的に存続できる可能性を高めることができます。
  • 社会的な役割: 企業は、社会経済において重要な役割を果たしています。存続期間を定めてしまうと、社会全体の安定性に影響を与える可能性があります。

特定の期間を定める場合

例外的に、法人の存続期間を定めることができる場合があります。

  • 設立時の定め: 会社法など、個別の法律において、設立時に存続期間を定めることができる旨の規定がある場合があります。
  • 契約による定め: 特殊な目的のために設立された法人で、その目的達成後に解散することを定めている場合など、契約によって存続期間を定めることがあります。

存続期間の定めがない場合の解散

存続期間を定めていない法人も、以下の事由により解散することができます。

  • 解散事由の発生: 会社法で定められた解散事由(破産、合併、分割など)が発生した場合
  • 株主総会の決議: 株主総会で解散を決議した場合

一般的に、法人は無期限に存続することができます。
しかし、特定の事情がある場合には、存続期間を定めることも可能です。
存続期間の定めに関する具体的な内容は、個別の法律や契約内容によって異なります。

六 代表者の氏名及び住所

民法第37条における「代表者の氏名及び住所」について

なぜ「代表者の氏名及び住所」を登記するのか?

民法第37条では、外国法人が日本に事務所を設けた場合、その代表者の氏名及び住所を登記することが義務付けられています。これは、以下の理由から重要です。

  • 法人と個人の紐付け: 法人という抽象的な存在と、それを代表して行動する個人を結びつけることで、法人の行為に対して責任を問えるようにするためです。
  • 連絡窓口の特定: 法人に関する問い合わせや書類の送達など、法人との連絡を取る際に、代表者が最初の窓口となるためです。
  • 訴訟における相手方特定: 法人を相手とする訴訟において、訴状などの書類を送達する相手方を特定するためです。
  • 登記簿上の表示: 登記簿に記載されることで、第三者に対してその法人の代表者を特定することができます。

登記上の注意点

  • 代表者の変更時: 代表者が変更になった場合は、速やかに変更登記を行う必要があります。
  • 共同代表者の場合: 複数の代表者がいる場合は、すべての代表者の氏名及び住所を登記する必要があります。
  • 住所の変更時: 代表者の住所が変更になった場合も、速やかに変更登記を行う必要があります。

「代表者」とは?

「代表者」とは、法人を代表して外部との交渉や契約を行う権限を持つ者を指します。一般的には、取締役や執行役員などが代表者となります。

代表者の氏名及び住所の重要性

代表者の氏名及び住所は、法人に関する様々な手続きにおいて重要な役割を果たします。例えば、

  • 契約の締結: 契約書に代表者の氏名と印鑑を押印することで、法人が契約の当事者となることを示します。
  • 登記申請: 法人に関する登記申請を行う際には、代表者の氏名と印鑑証明書が必要となります。
  • 訴訟: 法人を相手とする訴訟において、代表者を相手方として訴訟を提起することができます。

民法第37条における「代表者の氏名及び住所」は、外国法人の代表者を特定し、法人と個人の紐付けを行う上で非常に重要な要素です。
この情報は、法人と取引を行う相手方や、法人を相手とする訴訟を行う者にとって、不可欠な情報となります。

2 前項各号に掲げる事項に変更を生じたときは、三週間以内に、変更の登記をしなければならない。この場合において、登記前にあっては、その変更をもって第三者に対抗することができない。

民法第37条第2項の解説

この条文の意味

民法第37条第2項は、外国法人が日本に事務所を設けた場合、その登記事項に変更が生じたときに、速やかに変更登記をしなければならないと定めています。

具体的にどのような変更が生じた場合に登記が必要か?

  • 設立の準拠法の変更: 法人の設立根拠となる法が変わってしまった場合
  • 目的の変更: 法人の事業内容が大きく変わった場合
  • 名称の変更: 法人の名前が変わった場合
  • 事務所の所在地の変更: 事務所を移転した場合
  • 存続期間の変更: 法人の存続期間が変更になった場合
  • 代表者の氏名・住所の変更: 代表者が交代したり、住所が変わったりした場合

これらの事項に変更が生じた場合、3週間以内に変更登記の手続きを行う必要があります。

なぜ変更登記が必要なのか?

  • 登記簿の正確性維持: 登記簿に記載されている情報は、常に正確である必要があります。変更が生じた場合、登記簿を更新することで、その情報を正確に反映させることができます。
  • 第三者保護: 登記簿は、第三者が法人の状況を把握するための重要な情報源です。変更登記を行うことで、第三者が最新の情報を把握できるようになり、取引の安全性に繋がります。
  • 対抗力: 変更登記を行わないと、その変更を第三者に対して主張することができません。例えば、代表者が変更になった場合、変更登記を行わないと、新しい代表者が法人を代表して契約を結んでも、その効力が認められない可能性があります。

登記を行わない場合のデメリット

  • 法的な不利益: 登記を行わないと、法的な不利益を被る可能性があります。例えば、契約の無効や、損害賠償責任を問われる可能性があります。
  • 取引の円滑化の阻害: 登記簿の情報が正確でない場合、取引相手は、その法人と取引を行うことに対して不安を感じる可能性があります。

民法第37条第2項は、外国法人の登記事項に変更が生じた場合、速やかに変更登記を行うことの重要性を強調しています。変更登記を行うことで、登記簿の正確性を維持し、第三者を保護し、法的なトラブルを防止することができます。

3 代表者の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分命令又はその仮処分命令を変更し、若しくは取り消す決定がされたときは、その登記をしなければならない。この場合においては、前項後段の規定を準用する

民法第37条第3項の解説

この条文の意味

民法第37条第3項は、外国法人の代表者に関する重要な変更があった場合に、その変更を登記しなければならないと定めています。

具体的には、裁判所から代表者の職務執行停止代表者代行者の選任に関する決定が出された場合、その内容を登記簿に反映させる必要があるということです。

なぜこの登記が必要なのか?

  • 法人の代表権の明確化: 法人の代表権の行使が誰によって行われるのかを明確にすることで、法人の取引相手や債権者は、誰に対して連絡を取れば良いのかを正確に把握することができます。
  • 第三者保護: 代表者の職務執行が停止されたり、代行者が選任されたりした場合、その事実を第三者に周知させることで、不当な取引や損害を防止することができます。
  • 登記簿の正確性維持: 登記簿に記載されている情報は、常に正確である必要があります。代表者に関する変更があった場合、登記簿を更新することで、その情報を正確に反映させることができます。

登記を行わない場合のリスク

  • 取引の混乱: 代表者の変更が登記されていない場合、取引相手は、誰と取引をすれば良いのか分からなくなり、取引が混乱する可能性があります。
  • 法的な紛争: 代表者の権限に関する紛争が発生する可能性があります。
  • 損害賠償責任: 登記を行わなかったことによって、第三者に損害を与えた場合、損害賠償責任を問われる可能性があります。

第3項と第2項との関係

第3項は、第2項の規定を準用すると定めています。つまり、第2項で定められている「3週間以内の登記」や「登記前の対抗力がない」という規定が、第3項のケースにも適用されるということです。

民法第37条第3項は、外国法人の代表者に関する重要な変更があった場合、その変更を登記することで、法人の代表権の行使を明確化し、第三者を保護することを目的としています。
この規定は、法人の安定的な運営に不可欠なものです。

4 前二項の規定により登記すべき事項が外国において生じたときは、登記の期間は、その通知が到達した日から起算する。

民法第37条第4項の解説

この条文の意味

民法第37条第4項は、外国法人に関する変更事項が外国で発生した場合、その変更登記の期間について定めています。

具体的には、外国で発生した変更事項について、日本国内の登記所への通知が到着した日から、変更登記を行うための期間が開始されるということを意味しています。

なぜ通知の到着日から期間が開始されるのか?

  • 情報の伝達に要する時間: 外国で発生した変更事項が、日本に伝わるまでには、一定の時間がかかります。この期間を考慮して、登記の期間が設定されています。
  • 登記の準備期間: 変更事項の通知を受けた登記所は、登記の準備を行う必要があります。この準備期間を確保するためにも、通知の到着日から期間が開始されます。

登記の期間

第2項では、変更登記の期間が「3週間以内」と定められていますが、第4項では、外国で発生した変更事項については、「通知の到着日から起算する」と定められています。
つまり、外国で発生した変更事項については、通知の到着日から3週間以内に登記を行う必要があります。

民法第37条第4項は、外国法人の登記事項の変更が外国で発生した場合、その変更登記の期間を柔軟に定めるための規定です。
この規定により、外国法人の登記手続きが円滑に行われるようになっています。

5 外国法人が初めて日本に事務所を設けたときは、その事務所の所在地において登記するまでは、第三者は、その法人の成立を否認することができる。

民法第37条第5項の解説

この条文の意味

民法第37条第5項は、外国法人が日本に初めて事務所を設ける場合、登記を行うまでの期間は、第三者がその法人の存在を認める必要がないという趣旨を定めています。

具体的にどのような意味か?

  • 登記前の法人の地位: 外国法人は、日本において登記を行うことで初めて、正式に法的な地位を得ることができます。登記前には、その法人の存在を第三者が認めなくても、法律上問題はありません。
  • 第三者の保護: 第三者が、登記されていない外国法人と取引を行う場合、その法人の存在自体が疑わしい状況下で取引を行うことになるため、リスクが高いと言えます。この規定は、このようなリスクから第三者を保護するためのものです。
  • 登記の重要性: 登記は、外国法人が日本において正式に活動を開始するための第一歩であり、その法人の存在を公示する重要な手続きです。

なぜ登記が必要なのか?

  • 法的な保護: 登記を行うことで、外国法人は、日本国内で法的な保護を受けることができます。
  • 取引の円滑化: 登記を行うことで、第三者は、その法人の存在を確実なものとして認識し、取引を円滑に進めることができます。
  • 債権の保全: 登記を行うことで、外国法人が日本国内に財産を持つ場合、その財産に対して債権を保全することができます。

民法第37条第5項は、外国法人が日本において活動を開始する際の法的要件を定めています。
この規定は、外国法人の登記の重要性を示すとともに、第三者を保護するためのものです。

6 外国法人が事務所を移転したときは、旧所在地においては三週間以内に移転の登記をし、新所在地においては四週間以内に第一項各号に掲げる事項を登記しなければならない。

民法第37条第6項の解説

この条文の意味

民法第37条第6項は、外国法人が日本国内で事務所を移転した場合の手続きについて規定しています。

具体的には、

  • 旧所在地での移転登記: 事務所を移転した場合は、旧所在地の法務局で3週間以内に「移転の登記」を行う必要があります。
  • 新所在地での登記: 新しい事務所の所在地の法務局で、4週間以内に法人の目的、名称、代表者などの基本的な事項を登記し直す必要があります。

なぜこのような手続きが必要なのか?

  • 登記簿の正確性維持: 法人の所在地が変更になった場合、登記簿にその情報を正確に反映させることで、第三者が法人の所在を正確に把握できるようになります。
  • 第三者保護: 登記簿の情報が正確でない場合、取引相手は、その法人と取引を行うことに対して不安を感じる可能性があります。
  • 行政手続きの円滑化: 法人の所在地が変更になった場合、各種行政手続きを行う際に、最新の登記簿情報が必要となります。

各項との関係

  • 第2項との関係: 第2項では、登記事項に変更が生じた場合、3週間以内に変更登記をしなければならないと定められています。第6項の「旧所在地での移転登記」も、この第2項の規定に基づいて行われます。
  • 第1項との関係: 第1項では、外国法人が日本に事務所を設けた場合、登記すべき事項が定められています。第6項の「新所在地での登記」は、この第1項の規定に基づいて行われます。

民法第37条第6項は、外国法人の事務所移転に伴う登記手続きについて定めています。
この規定は、登記簿の正確性を維持し、第三者を保護し、行政手続きを円滑に行うために重要な役割を果たしています。

7 同一の登記所の管轄区域内において事務所を移転したときは、その移転を登記すれば足りる。

民法第37条第7項の解説

この条文の意味

民法第37条第7項は、外国法人が事務所を移転する際の登記手続きについて、より具体的な要件を定めています。

具体的には、同一の法務局の管轄区域内で事務所を移転する場合には、煩雑な手続きを省略し、簡素な「移転の登記」のみで済むと定めています。

なぜ同一の法務局内での移転のみ簡素化されるのか?

  • 事務処理の効率化: 同じ法務局内で事務所を移転する場合、必要な手続きが比較的単純であり、事務処理の効率化が図れます。
  • 登記簿の管理の容易化: 同じ法務局内で管理されている登記簿の情報は、一元化されているため、変更手続きが簡素化されます。

他の条項との関係

  • 第6項との関係: 第6項では、事務所移転の際に、旧所在地での移転登記と新所在地での登記の両方を行う必要があると定めています。しかし、第7項は、同一の法務局内での移転については、移転登記のみで済むと例外的に規定しています。

民法第37条第7項は、外国法人の事務所移転に関する登記手続きを簡素化し、事務処理の効率化を図るための規定です。
この規定により、外国法人は、同一の法務局内での事務所移転を円滑に行うことができます。

8 外国法人の代表者が、この条に規定する登記を怠ったときは、五十万円以下の過料に処する。

民法第37条第8項の解説

この条文の意味

民法第37条第8項は、外国法人の代表者が、この条項で定められた登記を怠った場合に、罰則が科されることを定めています。

具体的にどのような場合に罰則が科されるのか?

  • 事務所の設置登記を怠った場合
  • 登記事項の変更登記を怠った場合
  • 事務所の移転登記を怠った場合

上記のような場合に、代表者は50万円以下の過料に処せられる可能性があります。


なぜ罰則が定められているのか?

  • 登記制度の円滑な運営: 登記制度は、法人の状況を公示し、取引の安全性を確保するために重要な制度です。登記義務を怠る行為は、この制度の円滑な運営を妨げるため、罰則を設けることで、登記義務の履行を促す目的があります。
  • 第三者の保護: 登記がされていない場合、第三者は、その法人の状況を正確に把握することができず、取引に不利益を被る可能性があります。罰則を設けることで、第三者を保護する目的もあります。

まとめ

民法第37条第8項は、外国法人の代表者に対して、登記義務を確実に履行させるための規定です。
この規定により、登記制度の円滑な運営が確保され、取引の安全性も高まります。

第三十八条から第八十四条まで 削除

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