民法第十八条の解説

民法第十八条の解説

第十八条 第十五条第一項本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判を取り消さなければならない

条文の意味

民法第十八条は、成年後見制度の開始の要件である「精神上の障害により自己の事務を処理する能力が不十分である」という状態(第十五条第一項本文)が解消された場合、家庭裁判所は、一定の人の請求に基づき、成年後見開始の審判を取り消さなければならないと定めています。

より具体的には、

  • 被後見人精神状態を回復し、自己の事務を処理できるようになった場合、家庭裁判所は、本人親族などの請求に基づき、成年後見を終了させる審判を行う必要があります。

条文の意図

この条文の意図は、被後見人権利を保護し、必要以上の制限をかけないことです。

  • 被後見人精神状態を回復し、自己の事務を処理できるようになったにもかかわらず、むやみに成年後見が継続されることを防ぎ、被後見人が自立した生活を送れるようにすることを目的としています。

具体的な事例

例えば、精神疾患により成年後見を受けていた人が、治療により症状が改善され、日常生活財産管理を自分でできるようになった場合、本人家族家庭裁判所成年後見終了を請求することができます。

注意点

  • 原因の消滅: 精神上の障害が完全に回復するだけでなく、自己の事務を処理する能力が十分に回復していることが求められます。
  • 請求権者: 本人だけでなく、配偶者親族未成年後見人など、様々な人が請求することができます。
  • 家庭裁判所の判断: 家庭裁判所は、鑑定などを行い、被後見人精神状態を慎重に判断した上で、審判を行います。

民法第十八条は、成年後見制度必要なくなった場合に、それを終了させるための規定です。
この条文によって、被後見人は、回復した能力に応じて、より自立した生活を送ることができるようになります。

民法第十八条第2項の解説

条文の意味

民法第十八条第2項は、成年後見開始の審判について、一定の要件を満たせば家庭裁判所がこれを取り消すことができるという規定です。

より具体的に言うと、

  • 本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人、または検察官といった、特定の人々家庭裁判所請求した場合、家庭裁判所は、成年後見開始の審判全部または一部を取り消すことができるということです。

条文の意図

この条文の意図は、成年後見制度柔軟な運用を可能にすることです。

  • 被後見人状況が変化したり、成年後見の必要性がなくなった場合に、家庭裁判所柔軟に対応し、成年後見を終了させることができるようにすることを目的としています。

具体的な事例

例えば、

  • 被後見人精神状態を回復し、自己の事務を処理できるようになった場合、本人家族家庭裁判所成年後見終了を請求することができます。
  • 成年後見人職務を怠ったり、被後見人利益に反する行為を行っている場合、検察官家庭裁判所成年後見取り消しを請求することができます。

注意点

  • 請求権者: 請求できるのは、本人親族だけでなく、未成年後見人補助人検察官なども含まれます。
  • 取り消しの範囲: 家庭裁判所は、成年後見開始の審判全部または一部を取り消すことができます。
  • 家庭裁判所の判断: 家庭裁判所は、各人の状況証拠を総合的に判断し、取り消しの可否を決定します。 
民法第十八条第2項は、成年後見制度必要なくなった場合や、成年後見人職務を怠っている場合などに、家庭裁判所柔軟に対応できるようにするための規定です。
この条文によって、被後見人は、状況の変化に応じて、より適切な保護を受けることができます。

民法第十八条第3項の解説

条文の意味

民法第十八条第3項は、成年後見補助という二つの成年後見制度が並行して行われている場合に、その両方の審判を取り消す場合、補助についても同時に終了させるという規定です。

より具体的に言うと、

  • 被後見人に対して、成年後見補助の両方の審判が行われている場合、
  • 家庭裁判所が、成年後見の審判と、補助に関する民法第876条の9第1項の審判の両方を取り消す決定をしたときは、
  • 補助に関する審判も自動的に取り消されるということです。

条文の意図

この条文の意図は、成年後見制度の整合性を保つことです。

  • 成年後見補助は、被後見人保護という点で共通の目的を持っていますが、保護の程度が異なります。
  • 成年後見が不要になった場合、それに伴い、より軽い保護である補助も不要になるのが一般的であるため、両方の審判を同時に取り消すことで、制度の整合性を保つことを目的としています。

具体的な事例

例えば、精神疾患により成年後見補助を受けていた人が、精神状態を完全に回復し、日常生活を完全に自力で送れるようになった場合、家庭裁判所は、成年後見補助の両方の審判を取り消すことができます。

注意点

  • 民法第876条の9第1項: この条文は、補助に関する規定であり、被後見人一定の行為を行うためには、補助人同意が必要であると定めています。
  • 同時取り消し: 成年後見の審判と補助に関する審判は、通常は同時に取り消されますが、例外もありえます。

まとめ

民法第十八条第3項は、成年後見補助という二つの成年後見制度が並行して行われている場合、両者の関係性を明確にするための規定です。
この条文によって、被後見人状況に合わせて、適切な保護を行うことができます。

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