〈なぜ?〉35年の歴史を持つスクエニ“超有名RPG新作”が発売前から「クソゲー」扱いされていた“悲劇”のワケ

〈なぜ?〉35年の歴史を持つスクエニ“超有名RPG新作”が発売前から「クソゲー」扱いされていた“悲劇”のワケ

 35年の歴史を持つ「サガ」シリーズの完全新作となる『サガ エメラルド ビヨンド』(以下『サガエメ』)が2024年4月25日に発売された。

「サガ」といえばスクウェア・エニックスを代表するRPGシリーズのひとつだ。1989年ゲームボーイ初のRPG『魔界塔士Sa・Ga』から歴史がはじまり、「ロマンシング サ・ガ」シリーズや「サガ フロンティア」シリーズなどを生み出し、現在はスマートフォンアプリを展開している。

 しかし、このシリーズの新作には暗雲が立ち込めていた。発売に先駆けて体験版が配信されたのだが、楽しむ人もいる一方で「クソゲー」と言う人もいたのだ。

 なぜそこまで歴史あるゲームが、しかも約8年ぶりとなる待望の新作にもかかわらず、クソゲー扱いされてしまうのだろうか?

SNS時代に重要な「表面的な要素」に欠けたゲーム

 発売前に『サガエメ』がクソゲー扱いされた理由は大きく3つあり、そのひとつはグラフィックである。

 本作はバトル以外の画面がひどく簡素だ。マップはシンプルな背景に建物のイラストが生えているだけであり、電車も止め絵が無理やり動かされている状態である。スクウェア・エニックスのゲームといえば美麗なグラフィックをイメージする人もいると思うが、それとは正反対だ。

 会話シーンは一部ボイスありだが、立ち絵とセリフだけで動きはほとんどなく、極めて簡略化されたグラフィックを持つゲームである。

 ゲームに詳しくない人が見たら、制作途中の仮グラフィックと勘違いするかもしれない。

 一方、昨今のゲームマーケティングにおいて、特にビジュアルは重要とされている。TikTokやYouTubeといったSNSで話題になるには、見た目がよくなければ話にならないからだ。「ビデオゲームは遊ばなければおもしろさがわからない」とよく言われるものの、悲しいかな人間は見た目の印象を退けにくい哀れな存在だ。

RPGに求められているもの

 ふたつめの理由は、バトルシステムの複雑さにある。『サガエメ』はバトルシステムがやや難解であり、それを紐解くのがゲームとしての醍醐味になっている。だが、世間は必ずしもRPGにそういうものを求めている人ばかりではない。

 同じスクウェア・エニックスのゲームを例に見てみよう。2023年に発売された『ファイナルファンタジーXVI』はコマンドを選んで戦う形式からアクションRPGに進化したが、それでもアクションとしての難しさをほとんど求めておらず、むしろわかりやすさを重視している。

 2024年2月に発売された『ファイナルファンタジーVII リバース』もまた、コマンドを選ぶ要素は残しつつもアクションゲーム寄りになっている。が、昔ながらのコマンド選択式バトルもモードによってはきちんと残っているように、完全なるアクションゲームになったわけではない。

 つまり、進歩を見せつつも斬新すぎないのである(むしろゲーム全般を見ると保守的といえる)。

『サガエメ』は基本的な要素こそ、コマンドを選んで戦う古典的なバトルシステムである。しかし、考えずにコマンドを選んでいると雑魚敵にあっさり殺されるゲームだし、あえて弱い技を選んだり、攻撃しないことが肝要となるルールだ。一見すると馴染みのあるような見た目だが、実際は新しいルールに馴染む必要がある。そこがうまく伝わらず、クソゲーと思ってしまう人が出るのもありうる話だ。

 最後は、Nintendo Switch版の動作問題である。『サガエメ』は複数のハードで発売されることになっており、PS5版とPC版は快適に遊べるようだ。しかし、Nintendo Switchでは動作も遅くロードもだいぶ長い。

 幸いなことに、Nintendo Switch製品版はパッチで動作がいくらか改善されたと報告されている。とはいえ、可能であれば貴重な可処分時間をロードの闇には消したくないものだ。

そもそも「サガらしさ」はすべての人に理解されるわけではない

 では、『サガエメ』がクソゲーなのかといえば、私はそうではないと考えている。高難易度のバトルのおもしろさは確実にあるのだ。

 そもそも、「サガ」シリーズは尖ったRPGである。誰でもクリアできるようなゲームとは正反対で、ものによっては余裕で詰み状態になりかねないのだ。物語の進行方法がわかりにくかったり、バトルシステムが理解しづらかったりするのである。

 たとえば『ロマンシング サ・ガ』は巣を掘り返したアリのように大量の敵が出てくるし、『サガ フロンティア2』はミニゲームとなるシミュレーションゲームで挫折しうる。どこでもセーブできる作品が多く、それゆえにラスボスに勝てず詰みになることもしばしば。まるで罠のようなシステムだ。

 PS2で発売された『アンリミテッド:サガ』は特に異質で、最初は「サガ」ファンすらついていけなかったようだし、クソゲーと呼ばれ投げ売りされた。かつての福袋の常連タイトルであり、「108円で買えるゲーム」とよく言われていた。一方で、やり込んだプレイヤーはその魅力を発掘している。

『サガエメ』は約8年前に発売された『サガ スカーレット グレイス 緋色の野望』のシステムを受け継いだ作品で、キャラクターや世界設定などを豪華にした続編に近い存在である。その前身となる作品も、はっきりいってわかりにくいタイプの作品だ。

 ただ、「バトルシステムがおもしろいからOK」というなかなかぶっ飛んだゲームなのである。

「サガらしさとは何か」というと大きな話になるが、「一見するとよくわからないゲームシステムや物語から、それを読み取る暗中模索の遊び」ではないか。親切になり続けるビデオゲームの流れから考えると流れに逆らうパンクのようなゲームだが、だからこそ愛されることもある。

「売るための要素」と「サガらしさ」の相性が決定的に悪い

『サガエメ』は、「サガ」シリーズの集大成であるかのように見せる宣伝をしているがゆえに、必要以上に注目を集めているのではないか。前述のように、実際は『サガ スカーレット グレイス 緋色の野望』の系譜であり、多くの人が楽しめるタイプのゲームではない。

 確かに『サガエメ』は一般向けの要素を取り込んでいる。「せんせい」や「最終皇帝」といった過去作へのオマージュがあるし、バトルシステムを視覚的にわかりやすくする要素などがそれだ。

 ゲームを売る際により多くの人にリーチすることは重要だ。一方で、多くの人が触れれば、好評のみならず不評も増えるのが当然である。一口にゲーム好きといえども「サガ」の洗礼を受け入れられる人ばかりではないだろう。

『サガエメ』は、というか「サガ」シリーズ自体が(一部の例外を除いて)あまりおすすめできないゲームだ。国内ゲームメディアは雑誌文化を継承しているがゆえに、おすすめする記事は出てきても推奨しない記事はあまり出てこない。『サガエメ』はさすがに堂々とおすすめするようなことは避けられているが、それでも好意的な意見がほとんどだ。ゆえにユーザーが反発するように「クソゲー」といった言葉が出やすいのかもしれない。

 筆者はむしろ、前述した3つの要素は「サガだから問題ない」と答えられるし、『サガエメ』を楽しめている。ただ、周回プレイが前提のマニア向けRPGとしてもUI(ユーザー・インターフェイス)やスキップ機能が充実しておらず、サガ好きにもあまりおすすめできないと考えている。それでもいい、と言える人だけが遊ぶような常識外れのゲームといえよう。

(渡邉 卓也)

『サガ エメラルド ビヨンド』画像は任天堂公式サイトより

(出典 news.nicovideo.jp)

発売前からクソゲー扱いされるって、開発側も精神的に大変だろうな。
でも、実際にプレイしてみないとわからないこともあるはずだし、先入観に流されないでプレイしてみるべきかな

そろそろ根本的に違うゲームじゃないとどれも同じように思えるかもしれない
グラフィックを奇麗にしたところで流れは似たようなもの

<このニュースへのネットの反応>

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