民法第百二十条 (取消権者)

民法第百二十条 (取消権者)

第百二十条 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。

条文の意味

民法第120条は、行為能力が制限されている人が行った法律行為について、その行為を取り消すことができる人を定めています。

もう少し詳しく説明すると、

  • 取り消しできる人: 法律行為を取り消せるのは、その行為を行った制限行為能力者本人、またはその代理人、さらにはその権利や義務を継いだ人(承継人)に限られます。
  • 制限行為能力者とは: 未成年者、成年被後見人、被保佐人などが該当し、法律行為の能力が制限されている人を指します。
  • 他の制限行為能力者の法定代理人: 例えば、未成年者の法定代理人が、別の未成年者の代理人として行為をした場合、その行為も取り消すことができます。

なぜこのようなルールがあるのか?

このルールがあるのは、行為能力が制限されている人の保護を目的としています。

  • 本人の意思尊重: 行為能力が制限されている人は、判断能力が十分でないため、不利な契約を結んでしまう可能性があります。この条文は、本人やその代理人に、その契約を無効にすることができる権利を与えることで、本人の意思を尊重しています。
  • 法定代理人の責任: 法定代理人は、制限行為能力者の利益を代表して行為を行う責任があります。この条文は、法定代理人が不適切な行為をした場合に、その行為を取り消すことができるようにすることで、法定代理人の責任を明確化しています。

具体例

  • 未成年者が高額なゲーム機を購入した場合: 未成年者は、親などの法定代理人の同意なしに高額な買い物をすることは原則として認められていません。この場合、未成年者本人またはその法定代理人が、契約を取り消すことができます。
  • 成年被後見人が不動産を売却した場合: 成年被後見人は、認知症などにより判断能力が低下しているため、重要な契約は、後見人の同意が必要となります。後見人の同意なしに不動産を売却した場合、その契約は取り消すことができます。

2 錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵かしある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

民法第120条第2項は、行為能力の制限だけでなく、錯誤、詐欺、強迫によってなされた法律行為の取り消しについて、誰が取り消しできるのかを定めています。

条文の意味:

  • 取り消しできる人: 錯誤、詐欺、強迫によってなされた法律行為を取り消せるのは、その法律行為に瑕疵のある意思表示をした本人、またはその代理人、さらにはその権利や義務を継いだ人(承継人)に限られます。
  • 錯誤、詐欺、強迫:
    • 錯誤: 事実を誤解して法律行為をした場合
    • 詐欺: 相手方から欺かれて法律行為をした場合
    • 強迫: 相手方から脅迫されて法律行為をした場合


なぜこのようなルールがあるのか:

  • 本人の意思尊重: 錯誤、詐欺、強迫によってなされた法律行為は、本人の真意に基づかない行為であるため、本人がその行為を取り消せるようにすることで、本人の意思を尊重しています。
  • 法律行為の安定性: 一方で、無制限に法律行為を取り消せるようにすると、法律関係が不安定になるため、一定の制限を設けています。

具体例:

  • 中古車の購入: 中古車を購入する際、販売者が車の走行距離を偽って告げ、購入者がその情報を信じて契約した場合(詐欺)、購入者は契約を取り消すことができます。
  • 不動産の売買: 土地の面積について誤った情報を与えられ、それを信じて不動産を購入した場合(錯誤)、購入者は契約を取り消すことができます。


まとめ:

民法第120条第2項は、錯誤、詐欺、強迫によってなされた法律行為についても、行為能力の制限の場合と同様に、行為に瑕疵のある意思表示をした本人などが取り消しできることを定めています。
これは、本人の意思を尊重し、かつ法律関係の安定性を図るための規定です。

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